研究課題/領域番号 |
21K14014
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大橋 正俊 九州大学, 理学研究院, 助教 (60899491)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マグマ / 気泡 / 合体 / 噴火 |
研究実績の概要 |
火道内を上昇するマグマの気泡合体について理解を深めるため、2つのアナログ可視化発泡実験を行った。 一つ目のアナログ実験では、Hele-Shaw cellと呼ばれる薄いセルの中に、シリコンオイルと気泡を2つ注入し、真空ポンプで容器を減圧させた。減圧に伴って気泡が膨張すると、その間にある液膜が薄くなり、擬2次元的な気泡合体を観察できる。実験の結果、膨張する気泡間にある液膜は常にParallel filmを作るわけではなく、Parallel filmでは合体条件を説明出来なかった。そこで、膨張する気泡の相互作用を調べたところ、排水によるフィルム内の圧力勾配と、表面張力との競合を示す無次元数(フィルムキャピラリー数)が合体条件を決めていることがわかった。フィルムキャピラリー数が大きくなるほど、排水によるフィルム内の圧力が上昇し、気泡は大きく歪む。さらにフィルムキャピラリー数がある閾値を超えると、気泡が大きく変形し、合体しなくなることがわかった。この無次元数は、高温マグマの発泡実験の結果も上手く説明できた。フィルムキャピラリー数は、気泡を擬2次元的に観察する実験に適用でき、高温マグマの発泡実験以外にも、ポリマー溶液の発泡、パンの発泡の観察にも使える可能性がある。以上の結果は、Ohashi et al. (2022)で発表した。 二つ目のアナログ実験では、気泡をシリコンオイルの中に、精度よく注入する装置を作成することで、3次元的な気泡合体を観察することに成功した。実験結果を解析した結果、こちらも粘性抵抗と表面張力の競合を表す無次元数が、合体を制御していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実施計画では、「研究1:アナログ可視化発泡実験と合体頻度関数の決定」 を実施する予定であった。研究業績の概要に示したように、Hele-Shaw cell を用いたアナログ実験は順調に進めることができ、その実験結果をScalingすることに成功した。ただ、実験結果は、壁の影響を強く受けていることがわかったた。そのため、合体頻度関数をモデル化する前に、追加実験として、実験壁を取り外した3次元気泡合体の実験を実施した。追加実験は、天然のマグマが経験するような3次元気泡合体を再現することに成功し、また、そのScalingもすることができた。そのため、本実験計画はおおむね順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、3次元的な気泡合体の実験結果を解析する。実験結果をScalingし、気泡合体のタイムスケールをモデル化する。まずは、以上の結果を投稿論文にまとめる予定である。 これまでの実験では、気泡を2つしか注入していなかったが、実際のマグマには多数の気泡が存在し、気泡同士の相互作用を考慮する必要がある。先行研究では、Percolation theoryを用いて、相互作用を評価している。本研究で求めた気泡合体のタイムススケールから、Percolation theoryの相互作用パラメータを解析的に求め、気泡群としてのダイナミクスをモデル化する予定である。液膜の排水ダイナミクスという観点から、気泡の体積分率と浸透率の関係を見直す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画段階では、コロナウイルスの収束を見込み、国内・国外の出張を想定した。しかし、令和3年度の段階では、コロナウイルスがまだ終息せず、多くの学会がオンラインになった。そのため、旅費の多くが残り、次年度使用額に変更が生じた。
次年度は、コロナウイルスが終息していると見込めるので、この繰越た予算を元に、国外の学会に参加する予定である。
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