研究課題/領域番号 |
21K14018
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
志水 宏行 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 火山研究推進センター, 特別研究員 (30889051)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 火砕流 / 数値シミュレーション / 浅水流モデル / 流体力学 / 重力流 / 到達距離 / マグマ噴火 / マグマ水蒸気噴火 |
研究実績の概要 |
大規模な爆発的火山噴火(マグマ噴火・マグマ水蒸気噴火)において発生する火砕流の振る舞いは,流れ内部の粒子濃度の成層構造の効果,流れ内部に水(液体)が含まれる効果,流れ底面での地形の効果,の複数の要因に支配され,到達距離などの基本的かつ重要な問題が未解明のままである.応募者はこれまでの研究において,成層構造の効果を適切に考慮した水平方向に対して1次元軸対称の火砕流数値モデルを開発した.本研究では,これまでに開発した数値モデルを,水蒸気と水(液体)の状態変化の効果を考慮でき,かつ,実際の地形データ上での計算が可能な2次元数値コードに拡張することにより,マグマ噴火・マグマ水蒸気噴火由来の大規模火砕流の到達距離を統一的かつ実証的に再現・理解する.
2021年度においては,目標とするモデルの基礎となる既存1次元火砕流数値モデルに対して,他研究機関における室内実験との比較に基づくベンチマークテストを行い,当該モデルの有効性を確認した.この成果については,論文として国際誌に公表した.さらに,検証した1次元火砕流数値モデルを,水蒸気と水(液体)の状態変化の効果を評価できるモデルへ拡張し,広範なパラメータスタディを行い,マグマ噴火・マグマ水蒸気噴火など多様な噴火様式における火砕流の到達距離の支配要因について明らかにした.この成果については,現在,論文としてまとめている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究計画では,当初,以下の3段階の中間目標を設けた.(第1段階) 「粒子とガス(大気と水蒸気)から成る火砕流の既存1次元軸対称数値モデル」を,「水蒸気と水の状態変化の効果を考慮したモデル」へ拡張する.(第2段階) 第1段階で開発した「水蒸気と水の状態変化の効果を考慮した1次元軸対称数値コード」を「2次元数値コード」へ拡張する.(第3段階) 第2段階で開発した「水蒸気と水の状態変化の効果を考慮した2次元火砕流数値コード」を用いて系統的なパラメータスタディを進め,地質学的応用に関する考察・総括を行うと共に,これらの研究について成果発表を行う.
初年度において,第1段階の基礎となる成果(既存火砕流数値モデルの実験的検証)について論文公表・投稿まで実施し,第1段階の目標(既存モデルから「水蒸気と水の状態変化の効果を考慮したモデル」への拡張)を達成し,さらにそのモデルを用いたパラメータスタディにより多様な噴火様式(マグマ噴火・マグマ水蒸気噴火)における火砕流到達距離の支配要因を明らかにしたという点で,当初の計画以上に研究が進展したと判断される.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度においては,当初計画の第1段階の成果を論文として公表する.また,第2段階の「水蒸気と水の状態変化の効果を考慮した1次元軸対称数値コード」から「2次元数値コード」への拡張に着手する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は,主にコロナウィルス感染症の蔓延による学会のオンライン化のために生じた.
令和3年度の執行計画に関しては,当初の計画を変更し,物品費(計算結果を保存・管理するための計算機周辺機器購入費)に約10万円,旅費(日本地球惑星科学連合大会と火山学会秋季大会への現地参加費)に約20万円,その他(オープンアクセス費用込みの論文投稿料と英文校正費用)に約48万円を使用する.
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