本研究では,南海トラフ大地震の発生メカニズムの理解に貢献するため,西南日本弧に低温領域の熱年代学を適用し,永久変形に寄与する地質学的歪速度の推定を試みた.中国山地・四国山地を南北に横断する測線に沿って(U-Th)/He法およびフィッション・トラック法を用いた結果,以下の新たな知見が得られた:(1)東西の測線間に大きな年代値の違いは見られない,(2)南北の年代値の空間的分布に着目すると,隆起帯・沈降帯・隆起帯に対応した年代値の若返りが検出された,(3)10 Ma前後の年代値が得られたことから,中新世以降のテクトニクスを反映した可能性が示唆される.
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