本研究計画は化石生物の種同定の自動化を試みるものである.化石の種同定は古生物学の基本であり,地質年代の決定や古環境・堆積環境の推定のために欠かせない技術である.化石種は形態情報に基づく種記載と同定が行われるが,多くの場合で,それらは定性的指標に基づいて主観的に行われて来た.この作業を正確に行うには,長年の経験を要し,古生物学研究の作業効率を低下させている.そこで,本研究ではまず化石を3Dデジタルデータ化する.そして,得られたデータを,深層学習技術を用いて処理,化石の種分類の自動化を実現する事によって古生物学における同定作業の大幅な簡略化を目指すものである.
本研究の到達目標は日本国内から産出するイノセラムス類の教師データの作成,および深層学習を用いた化石種の同定技術の開発の2点である.本年度は本研究の集大成となる年度であるため,まず,研究に利用するデータセットの完成を最優先として実施した.残念なことに,本研究で対象としているイノセラムス類の分類の基礎となる模式標本の一部がロシア連邦の博物館に収蔵されていることから,本研究の最終的な目標達成は,国際情勢の安定後に実施することとする.
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