研究課題/領域番号 |
21K14037
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
清水 一行 岩手大学, 理工学部, 助教 (30748760)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水素脆化 / アルミニウム合金 / 放射光X線CT / 金属間化合物粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、放射光3D/4D破壊挙動解析および水素分布解析を駆使し、金属間化合物粒子によるAl-Zn-Mg合金の高強度化・高延性化に挑戦する。令和三年度は、研究計画通り、金属間化合物粒子として、Al7Cu2Fe粒子を分散させたAl-Zn-Mg合金の変形破壊挙動を放射光X線トモグラフィーにより3D/4D観察した。Al7Cu2Fe粒子は、粒子内部の水素トラップによる水素脆化抑制が期待される一方で、粒子自身が脆性的に破壊し、合金のマクロな力学特性を劣化させることが懸念されていた。このため、特に、以下の2項目に重点を置いた解析を行った。(i) Al7Cu2Fe粒子の水素脆化抑制効果:粒界・擬へき開亀裂の防止挙動解析、(ii) Al7Cu2Fe粒子の延性破壊助長効果:破断・剥離した粒子の3D形態解析と水素の影響評価。その結果、Al7Cu2Fe粒子は、Al-Zn-Mg合金の水素誘起擬へき開破壊を抑制できる一方で、粗大で歪な粒子が早期に損傷し、材料の破断伸びを低下させることが明らかとなった。さらに、次年度で実施予定であった、Al7Cu2Fe以外の粒子によるAl-Zn-Mg合金の水素脆化防止研究を前倒しで開始した。第一原理計算により、Al7Cu2Fe以外の各種金属間化合物粒子の内部水素トラップを網羅的に探索した結果、特にMn系金属間化合物粒子で、Al7Cu2Fe以上の内部水素トラップをもつ粒子を複数発見できた。加えて、Mn系粒子は、Al7Cu2Feよりも微細に形態制御可能であることから、合金の力学特性改善に資する粒子として強く期待できる。次年度は、Mn系粒子を分散させたAl-Zn-Mg合金の水素脆化防止・粒子損傷挙動を放射光イメージングにより3D/4D解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に進展していると評価できる。その理由は以下の通りである。 (i)初年度に実施予定であった、Al7Cu2Fe粒子に関する解析は完了していること (ii)(i)の成果は、5件の学会発表、1件の学会発表受賞、1件の特許出願、2件の論文投稿(査読中)であること (iii)次年度に実施予定であった、Al7Cu2Fe粒子以外の金属間化合物粒子による水素脆化防止の研究を既に開始しており、Mn系粒子という具体的な候補を発見していること
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、新しいAl-Zn-Mg合金の高強度化・高延性化手法として、金属間化合物粒子分散を提案している。この粒子には、内部に高い水素トラップ能をもつこと、粒子自身が脆性的に損傷しにくいことが要求される。初年度の研究により、これらを満たす金属間化合物粒子として、Mn系金属間化合物粒子が有望であることが明らかになった。次年度は、実際にMn系金属間化合物粒子を分散させたAl-Zn-Mg合金を準備し、その水素脆化防止・粒子損傷挙動を放射光X線CTによりその場観察する。最終的に、Mn系金属間化合物粒子が次世代高強度アルミニウム合金の開発に資することを実証したい。
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