研究課題/領域番号 |
21K14051
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小泉 隆行 東京工業高等専門学校, 機械工学科, 講師 (50814092)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 金属材料 / 冷間加工 / 材料強度 / 粘性 / ひずみ速度依存性 |
研究実績の概要 |
本研究では冷間加工によって結晶粒が微細化されたバルク金属の「時間依存強度」及び「時間非依存強度」を実験的に評価し,以下の成果が得られた. 一般的なひずみ速度と超低ひずみ速度に単軸引張試験,24時間の応力緩和試験とその応力-緩和時間関係のカーブフィッティングによる外挿から,材料の「時間非依存強度」を求める手法について提案した.先行研究で発見された巨大ひずみ加工材における著しい粘性が,一般的な塑性加工法でも発現するのか検討するため,冷間強圧延が施された工業用板ばね材を対象に「時間非依存強度」を定量的に評価した.本手法を用いることで高い信頼性を有する「時間非依存強度」を同定できることを明らかにした. 前述の時間非依存強度と一般的なひずみ速度の単軸引張試験から得られた流動応力について,これらを理論式によって解析することで「時間依存強度」を定量的に評価した.今回の実験対象である冷間強圧延が施された工業用板ばね材では,一般的なひずみ速度で得られる流動応力の約80%が「時間非依存強度」であった.構造用材料としての適正は高いものの,約20%の強度が時間の経過によって消滅することを示唆した. 従来の機械設計では,単軸引張試験によって得られた0.2%耐力や引張強さをそのまま設計上のパラメータとして用いることが多い.しかしながら,実際の流動応力には材料の粘性によって発現する強度,すなわち,「時間非依存強度」が含まれており,これは従来の機械設計において見落とされてきた点であることを示唆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般的な塑性加工法における冷間加工材では巨大ひずみ加工材よりも粘性が小さいが,一般的なひずみ速度の流動応力の約20%は粘性に起因することを明らかにした.これは従来の単軸引張試験から得られる材料強度の解釈に一石を投じる可能性があり,材料強度の評価方法そのものを見直す必要性があることを示唆している.2021年度は当初の計画通りに研究を進めることができたことから,「概ね順調に進展している」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度において,「時間依存強度」及び「時間非依存強度」の評価方法を確立できたことから,次年度以降は熱処理を活用することで冷間加工材の粘性の減少を試みる.具体的には,高い時間非依存強度を保持したまま粘性を抑制できる熱処理条件について明らかにする.
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