本研究では,造形時のアークや溶融池の挙動,ワイヤ溶融現象を含む造形プロセスを系統立てて整理するとともに,電流や電圧,送り速度など造形条件が造形精度や品質におよぼす影響を調査した. まず,これらのパラメータがライン造形物の形態変化におよぼす影響を調査し,入熱(電流・電圧/送り速度)と造形物の形状乱れ(蛇行)の関係を整理した結果,入熱を2 kJ/cm以上に設定することで造形物の形状乱れを抑制できることを示した.得られた知見を積層造形実験に適用し,ワイヤ供給速度を9.5 m/min,電流を200 A,電圧を12.3 V,送り速度を500 mm/min (入熱3 kJ/cm),ハッチングピッチを4.5,6.0 mmに変化させながらライン長さが50 mm の条件で往復方向に8本,高さ方向に4層の造形を繰り返した.造形物の断面観察の結果,ハッチングピッチが4.5 mmの条件では層間にマクロスケールの気孔が観察された.一方,ハッチングピッチが6.0 mmのとき,欠陥のない造形物が得られた.これらの結果から,ライン造形物の幅に対してオーバラップ量が過度となる条件では,前層上に次層が造形されることで局所的に溶け込み不良が発生し,気孔を誘発することが明らかになった. また,走査型電子顕微鏡を用いて造形物断面の気孔率を調査するとともに,X線CTを用いて気孔の3次元分布を評価した.これらの結果から,ワイヤアーク式付加製造法では溶け込み不良に起因した気孔が大きな割合を占めており,適切な条件の選定により高密度な造形物が得られることを示した.
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