昨年度に設計製作を行った時間差潤滑実験装置および本年度に製作した域差潤滑金型を用いて実験を行った.即ち,金型と管材の間に潤滑剤を供給しながら成形する方法において,潤滑剤圧力を時系列で変化させる時間差潤滑実験を行った.また,潤滑剤の広がる範囲を任意の領域に限定する域差潤滑実験も行った.この2つの潤滑技術を用いることで任意の位置のみを任意のタイミングで潤滑することが可能になり,肉厚分布を自在に制御可能となる. その結果,時間差潤滑について以下の知見を得た.1) 潤滑剤圧力を成形途中で降下させる制御方法により肉厚分布が制御可能である.2) 潤滑剤圧力降下時の内圧を大きくすると潤滑剤供給口の近傍(平面部の中央)の肉厚が低下し,コーナー部の肉厚が増加する傾向になった.即ち平面部とコーナー部の肉厚はトレードオフの関係になった.3) 成形の初期から中盤において潤滑剤を制御することが肉厚分布の制御のために重要である. また,域差潤滑について以下の知見を得た.4) 潤滑剤供給口から5 mmから15 mmの位置に,高さ0.1 mmから0.2 mmの段差を設けることで,潤滑剤の流れをせき止めることが可能である.製品の品質の観点からは高さの低い段差を採用するのが良い. これらの時間差・域差強制潤滑技術は自動車部品などの設計自由度の向上に寄与するものである.また,製品性能を製造パラメータで制御することが可能であるため工程や製品設計のやり直しの削減に有効である.
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