研究課題/領域番号 |
21K14061
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
杉本 剛 旭川工業高等専門学校, 機械システム工学科, 准教授 (30878161)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 焼入れ / セルオートマトン / 沸騰流 / ばらつき |
研究実績の概要 |
本研究の目的は従来高規模に集積された計算機でしかシミュレーションができなかった非定常サブクール沸騰におけるの熱伝達の様子を,「低次元セルオートマトン法」により超低負荷で計算する手法を開発することである.低負荷の計算によりサブクール沸騰が内包する「複雑性」(~繰り返し不安定性)を繰り返し計算にて解けるようになる.これを産業的に活用すると,熱処理工程で問題になる繰り返し品質ばらつきや,種々冷却・熱輸送装置の不安定性等がMBD(モデルベース開発)上で取り扱えるようになる. 本研究では初年度にセルオートマトンの構築を行い,2年目にその検証と,実部品形状への拡張を行った.セルオートマトンでシンプルな条件下で焼入冷却が正しく計算できていることが確認できた.実験との比較により,蒸気膜の複雑性(繰り返し処理時の不安定性)を精度良く再現する為には振動現象のマルコフ性を再現する必要がある事がわかった.マルコフ性を精密に再現する為,作成したセルオートマトンに,蒸気膜振動の波動方程式を実装することで実際の蒸気膜崩落現象を良く再現できることがわかった. 再現された蒸気膜崩落現象を基にサブクール沸騰焼入れによる焼入れ熱伝達率の部品表面内分布を算出し,熱処理品質・変形シミュレーションを行った.熱処理変形予測結果は実体を良く再現し,本手法が熱処理品質・変形の繰り返しバラツキ予測に有意義な事が確認できた.また焼入初期に発生する熱変形が焼入完了時の熱処理変形に残留し熱処理後変形として表れていることが分かった. 以上より低次元セルオートマトン法が実体を再現して実装できたことが確認でき,これにより実際の熱処理現象で起こる熱処理変形要因解析に用いる事ができるとわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本来,2023年度末までで熱処理ばらつき予測手法を開発する事を目的としていたが,2022年度末で完了した. これは国際熱処理学会で本研究を公開し,ディスカッションを行った事で種々アドバイスを頂けたことで研究の方針が早期に定まったことによる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究結果を受け,以下の2点を2023年度内で実施予定 ・熱処理変形バラツキを低減し,熱処理ひずみを安定化させる技術開発に繋げるため,蒸気膜振動の支配因子(蒸気膜の位相速度,加振力)に関する定量的な検証を行う ・本研究結果については既に,論文・学会講演等で公開済みであるが,より一般的に用いる事が出来るようにインターフェースの改良を行う. ・より上位の現象(冷却場全体の流れ)と連成をし,従来のVOF法等では解析負荷の面で不可能であった大規模系での沸騰焼入れ解析を行う.
以上をもって,本研究を2022年度末までにまとめるとともに,2023年度以降の研究に繋げる
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