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機械システムの可動部では摩擦損失を低減させるために潤滑油が用いられている。潤滑油は、主成分である基油と極微少量の添加剤から成る。潤滑油が摩擦損失を低減させるのは、摩擦面に潤滑膜を形成させて金属同士の直接接触を妨げるためである。潤滑膜には、基油が流体力学的に作用して形成させる流体膜と、添加剤が金属表面に優先的に吸着して自発的に形成させる自己組織化膜がある。また、自己組織化膜には、添加剤分子がそのまま吸着して形成される吸着膜と、添加剤分子が化学反応して形成される反応膜とがある。本研究では、固体表面と潤滑油との相互作用を利用した低摩擦な潤滑システムの実現を目指して、異なる2種類の添加剤により自律的に形成されるnmオーダーの凹凸（自己組織化ナノテクスチャ）表面の作製法の開発を目的としている。
2023年度の研究では、初年度（2021年度）に構築した温度調節（設定可能範囲：25-100度）機能を有して摩擦係数および膜厚分布を計測可能な摩擦試験システムを用いて、吸着型添加剤と反応型添加剤の併用によるナノテクスチャの形成を調べるとともに、ナノテクスチャについて潤滑性能を評価した。潤滑油の基油にはポリ-α-オレフィン（PAO）を用いて、吸着型添加剤としてステアリン酸、反応型添加剤としてZnDTP（ジアルキルジチオリン酸亜鉛）を用いた。ステアリン酸とZnDTPを併用した場合には、ステアリン酸の融点（70度）以上の温度環境においてもステアリン酸の吸着が生じてZnDTPの反応膜形成を阻害することがわかった。ZnDTPを単成分で用いた潤滑油により80度で滑り摩擦を加えることで形成させるナノテクスチャは、基油にネマチック液晶を用いた場合に摩擦低減効果を示すことがわかった。
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