本年度は,昨年度に引き続き,大気圧バリア放電プラズマアクチュエータにおける放電場の低次元モデルを構築するため,申請者らが開発してきた放電プラズマの流体モデルに基づく高精度数値シミュレーションをパラメトリックに実施することで,放電場の大規模データベースの構築を進めた.放電場データベースに対し,流体力学分野で提案されているモード分解手法を適用することで,放電場に適したモード抽出手法及び得られたモードの特性について知見を得た.並行して,放電場の計算負荷の低減を目的とし,スパース観測点位置最適化手法の開発に取り組んだ.先行研究では,最適実験計画法に基づく評価関数及び最適化アルゴリズムを用いた種々のスパース観測点位置最適化手法が提案されている.本研究では,従来手法に比べ,より高性能な複数の観測点候補を得られるスパース観測点位置最適化手法を開発した.また,スパース観測点位置最適化手法の種々の物理現象への適用可能性を評価するため,放電場データに加え,流体場及び地震波動場データに適用し,その性能を調査した.流体場及び地震波動場への適用については,スパース観測点位置最適化手法を用いて決定した位置における観測データに基づき現象の潜在変数を予測することで,観測点位置をランダムに選択した場合に比べて全体場を高精度に再構成できることが示された.一方,放電場の再構成精度は計算条件に大きく依存した.これは,放電場の有する強い非線形性と教師データ量不足が主な要因であると考えられる.今後はデータベース構築を加速し,放電場に適したモード分解手法及び観測点位置最適化手法の開発を進める必要がある.
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