初年度(2021年度)は,エアカーテンに用いる縮流ダクトの最適化を実施した.ダクトの断面中心には後端が切断されたNACA翼を設置することで,翼の後端で運動量の増大(ブースト効果)が発現することを確認した. 2022年度は,スモークワイヤ法を用いて,切断翼周りの可視化を実施した.これにより全年度に実施した熱線流速計の計測実験で見られた流れのブースト効果が観測された位置において,気流が合流していることが明らかとなった.また,切断翼の切断位置および翼厚を変えることにより,流れの合流位置を制御できることが明らかとなった. 最終年度(2023年度)の前半では,粒子画像流速測定(PIV)法を用いた流れの定量評価を実施した.レーザーの反射を抑える材料で切断翼を製作し,翼近傍および後流の流動特性を調査した.切断翼の翼厚をNACA0036よりも大きくした場合に,翼の切断部に到達するより前に流れが翼表面からはく離しており,切断翼によるブースト効果が確認できなかった.一方で,抑厚がNACA0036以下の翼に関しては,翼の後端まで流れがはく離することなく,翼の側面を沿って流れる様子が確認できた.翼の後端を切断した場合には,切断位置が翼の全長から85-90%の位置で切断した場合に,運動量のブースト効果は最大となった. 後半では,運動量のブースト効果が発現する翼形状を用いて,エアカーテン用ノズルを作成し,呼気を模擬したジェットにエアロゾルを噴霧し,その遮断効果を検証した.シミュレーションでは,5-30ミクロンのエアロゾル粒子を含む疑似呼気をエアカーテンに向けて垂直に吹きかけた時の粒子の挙動を調査した.その結果,ノズル吹き出し部の流速が1m/s以上で,エアロゾルはエアカーテンにより遮断できることが明らかとなった.また同様の条件で実験を実施し,シミュレーションと同等の結果が得られた.
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