燃焼を通じて生成する微粒子であるすすはふく射などにより燃焼状態に大きな影響を及ぼすほか、健康に悪影響を及ぼすために、その生成機構について、古くから議論されてきた。長年の研究により、多環芳香族炭化水素が前駆体となり核生成をすることですすの粒子核ができることが定説となっているが、実験結果からの推察であったり、数値解析による検討であり、多環芳香族炭化水素からどのような速度ですすが生成するのかを検討した例はなかった。 令和3年度に装置を構築済みであったが、原料である多環芳香族炭化水素の露点がより高くなる実験条件では、現状の装置では配管におけるデポジットが避けられなかった。そこで、配管におけるデポジットを避けられるように原料フィード装置のカスタマイズを実施した。その上で、本年度は実験的検討を進めた。多環芳香族炭化水素からのすす生成メカニズムを明らかにするために、すすが生成しない条件とわずかに生成する条件との境目(Sooting Limit)を探す実験を行ったところ、PAHsの種類によってPAHsの濃度を変化させたときの挙動が全く異なることが明らかになった。例えば、2環のPAHsであるナフタレンでは多数の小さい粒子が発生した一方で、3環のPAHsであるフェナントレンやアントラセンでは、比較的大きな粒子が発生したことから、すす粒子が発生する臨界径に差がある可能性が高いことが分かった。ピレンは濃度の増加に伴い、粒子濃度が増加したのに対し、アントラセンは粒径が増大するのみであった。
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