本年度は,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の高対向流速における燃え拡がり速度を上手く再現できていなかった燃え拡がりモデルを改良し,実験値と定量的に一致するようにモデル精度を向上させた.具体的には,火炎高さ(=火炎とCFRP表面の距離)のモデル式を修正した.従来のモデルでは,火炎高さは対向流速に反比例し,流速の増加と伴に火炎はCFRP表面に限りなく近づく(つまり,火炎高さがゼロになる)仕様となっていた.それにより,燃え拡がり速度の推算値が実験値よりもかなり高くなってしまっていた.実際の燃焼現象では,火炎は消炎距離以上に壁面(今の場合はCFRP表面)に近づくことはできないため,火炎高さは消炎距離に漸近していくのが妥当と考えられる.そこで,実験結果より消炎距離を推定し,火炎高さがその値に漸近するようにモデル式を改良した.そのモデル式をCFRP燃え拡がりモデルに組み込み,再度燃え拡がり速度を算出したところ,低流速から高流速に至る広い流速条件において実験値と定量的に一致した.一方で,CFRP燃え拡がりモデル中の火炎長さは未だモデル化できておらず,実験値を使用してしまっている.そのため,現状のCFRP燃え拡がりモデルは不完全なモデルとなっている.完全なモデル化には,理論的アプローチからの火炎長さのモデル式導出,そして実験による検証が必要となる.今後はそれを課題として取り組み,最終的には完全モデル化されたCFRP燃え拡がりモデルを構築する.
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