【目的】固体・液体界面における微細気泡の動的メカニズム解明に向けて,バネッセント波を用いた全反射蛍光観察に基づき,固液界面極近傍の領域に特化した液体温度計測技術の開発に取り組む.蛍光強度の温度依存性を利用する従来法に代わり,蛍光分子の回転運動に伴う偏光解消特性に基づく手法を提案し,気泡周囲の液体温度計測法としての有効性を検証する. 【最終年度の成果】前年度に引き続き,ガラス平板間に封入された液滴の固気液三相界面近傍について全反射蛍光偏光法による温度計測の妥当性・再現性を検証した.その結果,三相界面近傍で体積照明に比べて全反射照明の場合に散乱光の影響を受ける領域が狭いことを示したが,界面付近数十um以内では10℃以上の測定誤差が生じた.また,全反射照明を用いた場合は体積照明の場合よりも偏光度が高く,全反射の入射角が大きいほど,経過時刻が長いほど偏光度が増加することを明らかにした.これは蛍光分子と壁面との相互作用(回転運動の抑制や吸着)が偏光度に影響することを示唆する.この結果を踏まえて,蛍光分子溶液が直接壁面と接触しないフィルム型の表面温度センサーの開発を進めた.封入溶液の粘度調整により温度感度を15倍程度に改善し,表面温度分布の可視化に成功した.また,蛍光信号増強のため局在表面プラズモン共鳴を利用した蛍光ナノプローブの開発にも取り組み,一定の増強効果を確認した. 【本課題全体の成果】 全反射蛍光偏光法による壁面近傍液体温度計測法の開発を行い,固気液三相界面近傍について適用を試みた結果,液相において一定の妥当性が示すと同時に,気液界面近傍における散乱光による影響,固液界面と蛍光分子の相互作用の影響が偏光度に表れることを明らかにした.得られた知見に基づいて蛍光溶液封入型の表面温度センサーの開発や局在表面プラズモン共鳴を利用したプローブの開発にも取り組み,その有効性を示した.
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