固体壁面のナノバブルの三相界線における微視的力学的バランスを、分子動力学(MD)法を用いて解析を行った。微視的力学バランスの解析は、密度分布より算出したナノバブルの見かけの接触角とヤングの式より算出した接触角を比較することで行なった。ヤングの式における各表面張力は、計算領域を微小領域に分割し、その領域内の圧力をMD法より計算することで算出した。解析は、固体壁面の濡れ性、凹凸などの壁面形状、壁面温度などを変化させて行なった。濡れ性を変化させた解析では、壁面の一部を疎水性にし、それ以外の濡れ性を親水性から中性に変化させて行なった。この解析より、濡れ性を変化させた壁面の境界で三相界線がピニングされている場合、見かけの接触角とヤングの式のより算出した接触角は一致しないことがわかった。一方三相界線がピニングされていない場合は、見かけの接触角とヤングの式より算出した接触角は一致することがわかった。この結果より、三相界線がピニングされている場合は、ヤングの式では考慮されていない力が気体と固体間の表面張力方向に働いていることが示唆された。次に、壁面に凹凸形状を作成した場合、凹凸の形状によりナノバブルの形状が変化し、さらに凹凸の深さによりナノバブルの発生を制御できることがわかった。最後に、壁面温度を変化させた場合もナノバブルの形状が変化することがわかった。さらに、壁面温度を変化させることで表面張力も変化することを確認した。この結果より壁面形状や壁面温度によりナノバブルの形状を制御できる可能性が示唆された。
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