研究課題/領域番号 |
21K14099
|
研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
古川 琢磨 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (80818518)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | T-S波 / 線形安定理論 / 境界層方程式 / 安定曲線 |
研究実績の概要 |
当該研究期間中は鉛直平板周囲に生じる自然対流境界層のLESの結果から変曲点でのせん断速度の極小化が対流場の完全層流化をもたらすことを明らかにした.またふく射熱流束効果を加味した線形安定性解析の支配方程式を導出して系の線形安定性解析を試みた.ふく射熱流束による変動成分項を考慮するために,平行平板間の入射強度の理論式を採用した.線形安定性解析の結果から固有ベクトルの虚数成分から局所レイリー数及び周波数における線形曲線を導出した.またプログラムを改良して,擾乱成分のみに注目可能な擾乱方程式による直接数値解析(DNS)プログラムを開発した.線形安定性解析および直接数値解析との比較の結果,DNSで確認されたある一定数での吸収係数の完全層流化現象を確認することができた.今後は線形安定性解析で導出された固有関数との比較を行い,定量的な観点からふく射効果による安定性について論ずる予定である.自然対流温度境界層の定量的な可視化計測を行うために,自然対流境界層内部の熱伝導,対流,ふく射伝熱を加味した解析モデルを構築して,実験との比較を行った.実験との比較結果から放射率による温度境界層の差異は確認することができたが,定量的な一致にはならなかった.数値解析による考察から,個体壁でのふく射吸収による発熱効果が見かけ上の温度境界層を厚くすることが示唆されており,今後は放射率の設定を精緻に行い,実験との比較を行う予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究期間中にふく射発熱効果を考慮した線形安定性解析のための支配方程式を導出した.当研究ではふく射伝熱の粘性安定を論ずることを目的としていたため,本方程式の導出は意義のあるものであると考える.また自然対流境界層の可視化計測を実施するために,断熱材を多数使用した矩形キャビティを作成した.実験では熱漏洩が強く影響するために,本研究機関中には固体熱伝導を加味した解析モデルの構築を行った.以上の進捗状況から当該研究は概ね順調に進呈していると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
線形安定性解析理論の支配方程式導出により,流体不安定性について定量的に論ずることが可能になった.今後は各局所レイリー数における温度,速度の固有関数を導出することにより,定量的に境界層成長について論じていく予定である.また熱伝導効果を考慮した伝熱解析モデルを使用することで,温度境界層の定量可視化手法を構築する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該研究期間中は新型コロナウイルスの感染拡大により,当初予定していた東北大学での実地試験を行うことができなかった.そのため当該年度の予算消化が想定より減少し,次年度使用額と差異が生じた.
|