研究課題/領域番号 |
21K14101
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
北山 文矢 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (50774197)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アクチュエータ / 磁気式波動歯車 / 機構・構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究では軽量な脚支援機器用アクチュエータの実現を目的とした。当初の計画では,コイル,磁石,波動歯車から成るアクチュエータ開発およびその制御則実装を本年度に実施予定だった。上記アクチュエータ開発まで実施したがトルクが不足していたため,磁気式波動歯車とブラシレスモータを組み合わせたアクチュエータを提案した。 まず,脚支援機器用アクチュエータよりも小型な従来アクチュエータ構成 (ブラシレスモータと波動歯車の組み合わせ)を基にし,コイル,磁石,波動歯車から成るアクチュエータを設計した。部品撤廃により従来構成に対して8%の重量低減がみられた。一方で,ギア効果を有効利用できなかったためにトルクが約80%低減した。 次に,磁気式波動歯車とブラシレスモータを組み合わせたアクチュエータ構成を提案した。磁気式波動歯車は,既存の波動歯車に存在する多数のベアリングと楕円カムを撤廃し,磁石を配置する。磁気式波動歯車では,磁石磁力により波動歯車の一部品(弾性体円筒)を楕円変形させる。それから,モータにより磁石を回転させ,変形形状の楕円傾きを変化させ,弾性体円筒の歯の噛み合いによりトルクを生成する。 磁気式波動歯車の動的挙動の解析法を検討した。本手法では,弾性体円筒上の磁力が円筒の楕円傾きと磁石位置によって決まると仮定し,静磁場解析により入力変数を楕円傾き,磁石位置,出力変数を磁力分布としたデータテーブルを作成した。それから,機構・構造解析ソフトウェアによりデータテーブルに基づいた磁力付与,弾性体変形,各部動的挙動を計算する。本解析結果によると,磁気式波動歯車は11Nm程度のトルクを生成した。磁気式波動歯車とブラシレスモータを組み合わせたアクチュエータは,従来構成に対して35%の重量低減がみられ,出力トルクの低下は約20%であった。今後は脚支援機器用アクチュエータのサイズでの設計を図る。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたアクチュエータ構成では出力トルクが低かったため,本年度にアクチュエータ構成を一部変更した。変更後構成では出力トルク低下をある程度抑えることができており,目標値達成の見通しが立った。しかしながら,目標値達成までは至っていないため,計画よりやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,動作解析法の解析精度向上,トルク向上のための磁気回路最適化,脚支援機器用アクチュエータとしての設計・試作機作成・実機検証を実施する。 動作解析手法における仮定「磁力が円筒変形形状の楕円傾きと磁石位置によって決まる」を,仮定「磁力が円筒変形形状の楕円傾き,楕円率,磁石位置により決まる」に変更し,3入力1出力のデータテーブルを解析に用いることで解析精度の向上を図る。試作機の実測値と解析値の比較により本手法の有用性を評価する。 磁気式波動歯車のトルク向上のために,ヨーク構造・磁石配置の検討,パラメータ最適化を実施する。それから,脚支援機器適用に向け,適切なサイズ,ギア比を持つ磁気式波動歯車を設計開発する。その後,市販のブラシレスモータと組み合わせた試作機を製作して特性測定する。 当初計画ではコイル,磁石,波動歯車から成るアクチュエータ構成を採用予定であったが,現状では磁気式波動歯車とブラシレスモータから成るアクチュエータ構成を採用する可能性が高い。それに伴って,駆動装置構成が単純化されることことも予想される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ソフトウェア費用の予想額と実際価格が異なった等の事情で,次年度使用額が生じた。本費用は実験用治具作成のための材料費として次年度に計上する。
|