研究実績の概要 |
本研究では軽量な脚支援機器の実現を目的とし,軽量な磁気式波動歯車とブラシレスモータを組み合わせたアクチュエータを開発している。磁気式波動歯車は,軽量な磁石,ヨークから成る磁気式ウェーブジェネレータ(磁気式W/G,入力軸),弾性体外歯車であるフレクススプライン(F/S,出力軸),剛体内歯車であるサーキュラスプライン(C/S,固定軸)から構成される。昨年度までに,4極磁石モデル,16極磁石モデルの2種の磁気式波動歯車を提案した。それから,F/Sの変形形状を考慮した磁気式波動歯車の解析法を構築した。4極磁石モデルの最大伝達トルクは解析で3.3Nm,実測で3.2Nmであり,16極磁石モデルの最大伝達トルクは解析で5.4Nm,実測で4.7Nmであった。これらの最大伝達トルクは脚支援機器用途としては不十分であると判断し,磁気式波動歯車の改良を今後の課題として挙げていた。 本年度は,F/Sの変形形状と最大伝達トルクの関係性を調査し,16極磁石幅拡大モデルを提案した。F/Sの周辺に5台のレーザ変形を配置し,F/Sの変形形状を測定した。F/Sは原則楕円状に変形していた。楕円変形形状の長軸の傾きと磁気式W/Gの回転角の角度差が大きくなるときに伝達トルクは上昇し,同時に変形形状は楕円から真円に近づいた。一定の角度差を超えると,伝達トルクが最大を迎え,その後急激に低下した。この際,F/Sと磁気式W/Gの磁気的結合が外れ,変形形状は真円となった。磁石幅40mmの16極磁石を有する磁気式波動歯車(16極磁石幅拡大モデル)を提案した。最大伝達トルクは解析では20Nm以上・実測では8Nmであった。このように,磁気式波動歯車のトルク伝達過程を解明し,最大伝達トルクを大幅に向上させた。
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