研究課題/領域番号 |
21K14103
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
伏見 龍樹 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (60890944)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超音波 / 音響浮揚 / 音響立方ディスプレイ / 波面ホログラム |
研究実績の概要 |
本研究は音響立体ディスプレイの一般普及へ向けた課題を波面ホログラム最適化の観点から解決を目指すものである.本年度は波面ホログラムのベースとなる最適化アルゴリズムの改善・評価,ディスプレイの画質向上に寄与するMicrophone-in-the-loop(MITL)の開発,そしてフレームレート向上に寄与する基盤システムの三方向から問題に取り組んだ. 最適化アルゴリズム開発:音響立体ディスプレイはフェーズドアレイ振動子を用いて物体を浮揚させ,描写する.これまでは,振動子アレイの振幅と位相,もしくは位相のみを用いて制御していたが,新たにアレイの振幅変調のみでも最適化できる手法などを開発した.これらの知見は,音響立体ディスプレイの動作方法を拡張し,よりシンプルなシステムの開発に寄与する可能性がある.AIP Advancesに2021年12月付で発表し,同誌のEditor’s Pickに選出された. MITLの開発:これまでの研究から理論上の音場は実験で得られる音場とは異なることが判明している.MITLはこれを実験上で修正し,最適化するシステムである.狙い通りに自動微分を有効化したモデルに実験値を組み込むことで,実験システム上で目的の音場を得られることが実証できた.従来の最適化法よりも飛躍的な最適化時間の削減に成功した.現在,論文の発表に向けて調整している. 基盤システムの開発:当初はフレームレートの改善は時間軸における波面ホログラムの最適化を行う予定であった.しかし,従来の音響浮揚装置では実現不可能なサイズの物体や密度の移動ができる手法を新規で発見した為,そのPoCを開発することに方向転換した(特許出願予定).そのPoCデバイスの開発に成功し,論文化する予定である.音場操作により扱える密度やサイズが向上したことで,従来以上に大きなディスプレイやフレームレートを向上できる可能性を秘めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プロジェクト初年度で国際論文1稿を発表し,研究協力者の協力のもと二つのプロジェクトの開発も成功している.
当初の計画からは外れている部分はある.しかし,当初の線形的な改善を目指す研究計画に対し,代表者が選択した方針は非連続的なイノベーションを当該分野で生む可能性が高く,計画以上の成果が出ていると考えられる.
また,MITLは当初では空中のフェーズドアレイ振動子のみを対象として研究してきたが応用性が高く,他分野にも大いに貢献できることが判明している.
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今後の研究の推進方策 |
既に優良な研究として発表できるまでの機能と性能を確認しているため,まずは当該研究プロジェクトの結果の公表を目指す.
予定通りMITLの最適結果をベースとする機械学習プラットフォームを開発し,実験システムの正確度を向上させる予定である.想定ではMITLを用いて最適化した例を大量に生成し,それらをOptunaなどのネットワーク最適化パッケージを用いて最適なネットワークを探索する.開発に成功すれば,分野内で初めて実験システムに最適化したホログラム生成システムとなる.発表時にはHow Toなどを示した説明サイトを作り,他分野でフェーズドアレイ振動子を用いる研究者も応用できるようにする予定である.
また,基盤システムにおいては,音響立体ディスプレイへの前置きとして一般的なプロジェクションマッピングを用いたARアプリの開発をまず目指す予定である.ARシステムの開発を通して音響立体ディスプレイへの応用を探り,将来的な音響立体ディスプレイの研究に結び付けたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスパンデミックの影響が2021年度でも続き,国内旅行費,および海外渡航費が無くなり,当初予定していた旅費の必要性が無くなった.その為,次年度使用額が発生することとなった.2022年度では国内・海外学会もフィジカルでの予定が多いため,次年度繰り越し額はそれらに使用する予定である.
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備考 |
Open Scienceの為,論文のデーターはすべて(主要コード,解析,図表生成コード及び使用したデータセット)公開済みである.
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