本研究では,これまで走行性能が高いと把握してきた車輪沈下・支持を利用した移動を群ロボット同士の協力的な移動に適用し,不整地軟弱地盤走行における滑り抑制を目指した.移動ロボットの構造は,2輪のスタビライザを登載したものとし,そのスタビライザに伸縮機構を付加したものとした.スタビライザの機構を維持したまま,伸縮機能を登載することは,単体の移動と他のロボットとの結合と分離を可能とした.2023年度には以下2点を実施した.
1.(高牽引負荷状態における走行試験の実施)高斜度での試験は試験装置の制約から,ロボットに錘を登載し負荷をかけた状態での試験に切り替え,台数と走行性能(スリップ量)の関係を把握した.その結果,垂直登坂では牽引負荷が増加した際にも台数が増えることでスリップ量が抑制され提案する結合移動が有効であると把握できた.結合状態については高負荷時でも分離等が発生しなかったため,現状の構造で良いことを把握した.2.(横断走行試験)横断走行に関しては想定とは異なり,台数が増加するほど滑り量が増加することを把握した.この結果を踏まえ,滑り量の抑制のために,結合部に旋回機構を登載する改良を実施した.結果,まず伸縮しながら旋回移動が可能な状態を構築できた.一方で,旋回移動を利用した結合伸縮移動でも台数の増加効果は滑り抑制に寄与しなかった.この結果を踏まえ,本研究で開発した結合状態では横断時には移動体のフォーメーションを変更し,少ない台数で移動することが有効であると把握した.
以上,本研究で開発した,車輪沈下・支持を利用した複数台による協力的な移動は,特に垂直登坂では台数が増加することで滑りが抑制できると把握した.本移動は不整地軟弱地盤上での複数台の移動ロボットによる協力的な移動例になりえる可能性を示唆できた.
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