最終年度において、完全気密で折り紙のような構造を持つ履帯を特徴とするクローラ形ロボット「Toroidal Origami Monotrack」の全機能の実装を達成した。具体的には、前年度に完成した折り紙構造ボディの湾曲モデルを基にした首振り方向操舵機構の設計、ピンチローラー式駆動装置のローラーの再設計による折り目の抵抗低減、遠隔操作を可能にする通信機や小型バッテリーの内蔵などの研究開発を含む。これらにより、単独機能(前進・後退、旋回、気密履帯の閉鎖)の実現ではなく、全機能の統合が実現された。さらに、それらの統合機の推進速度や旋回性能などのモビリティ性能の測定が行われた。 研究期間全体の成果は、従来にはない折り紙構造を有する循環履帯の移動体を実現したことである。具体的には、新機構の実装方法だけでなく、蛇腹形の無限循環する履帯(ボディ)を効果的に曲げるための設計手法とその性能を明らかにしたことである。この学術的な意義は、新たな表面循環機構の変形機構の提案により、従来では困難であったクローラ履帯の3次元的な変形(全方向への湾曲)を可能としたことである。一方、産業的な意義としては、障害物や地面に摺動せずに移動できるため、瓦礫などの不整地環境でのスムーズな走行が可能なロボットの開発に寄与することである。また、完全気密構造を有するため、粉塵や水が内部機構に直接触れない利点から、厳しい環境での使用に適したロボットへの応用が期待される。
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