水中ロボット設計において必ず避けなければならないリスクは浸水であり,浸水による故障によりロボットは水中で動かなくなり回収が難しくなる.特に資源のサンプル回収等の調査のために水中ロボットに搭載されるマニピュレータは,可動部が外部(水中)に露出しているため浸水のリスクが大きい.従来の水中マニピュレータは,浸水を防ぐためにケースやパッキン等で関節を密閉して防水処理を施し,水中で駆動させている.そこで本研究では,関節の防水処理を施さずに水中で利用できる新しい水中マニピュレータの実現を目的として研究を実施した. 令和3年度では,1関節モデルを用いた要素技術の設計に取り組んだ.水中で使用可能な関節構造を設計するために,ガラスエポキシを用いてロボットフレームを構成し,関節に強磁性体であるブリキ板,低融点合金としてはんだを用いた簡易的な1関節モデルを作成した.コイルによる誘導加熱が水中で可能か確認するために,まず始めに作成した1関節モデルを水に濡らした状態で誘導加熱を行い,関節の相変化が可能か確認を行ったところ,問題なく相変化が可能であることを確認した.次の段階の実験として,1関節モデルを水没させた状態で誘導加熱を行った.関節の温度上昇は確認されたが,はんだに相変化を起こすほどの大きな加熱を行うことができなかったため,関節から熱が水中へ逃げていかないような断熱設計やコイルの最適化を行う必要があることがわかった.
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