本研究では筋シナジー仮説に着目し,ヒトの手の運動機能解析と多自由度ロボットハンドでの種子運動の連続制御を目的とし,申請時に以下の4つの小目標を定めた.a) 筋活動と種子運動の同時計測による筋シナジーの解明,b) 規定となる筋シナジーを用いた義手制御モデルの機械学習的獲得,c) 健常者と切断者の筋活動の相関解析,d) 実機・シミュレーションでのオンライン評価. 筋電位と指関節角度を同時計測するシステムを計算機,筋電センサ,画像認識型3Dモーションキャプチャ,ADコンバータ等を用いて構築し,複数の健常者でデータ収集を行いデータセットを構築した.また,Generative Adversarial Network (GAN)の生成器,識別器を設計し,先のデータセットを用いて,筋活動から指関節角度の推定が行える制御器を構築した.また,この識別結果に基づいてバーチャルハンドや五指駆動型筋電義手ハンドを制御するシステムを作成した.これらの結果は国際会議にて発表された. 先の筋活動から指関節角度を推定する生成器を機械学習によって獲得できたことにより,生成器と対応したデコーダを作成した.デコーダによって逆に指関節角度から典型的な筋活動を求めることができるようになり,筋の協調性を解析することができるようになった.また,指関節角度,筋活動を主成分分析を用いて分解し,運動の基底となる動作を明らかにした.これらの結果は現在国際会議に投稿中である. 一方でネットワークの肥大によって,学習に時間が掛かりオンラインでの評価が難しくなってしまい,切断者への適用やタスクによる評価が行えなかった.これに関してはネットワークの構造を変更し,共通部分と個人差の部分を分離することで学習時間の短縮を行う手法の開発に取り組んでいる.
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