研究課題/領域番号 |
21K14134
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
徐 嘉楽 和歌山工業高等専門学校, 知能機械工学科, 助教 (30898200)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | MEMS / 触覚ディスプレイ / 触感 / 形状記憶合金 / 厚膜形成 |
研究実績の概要 |
本研究では、人間の指先に点字や触感などの触覚情報の提示を目指して、個人差なく刺激提示が可能な高出力の触覚ディスプレイの開発に取り組んでいる。本年度はSMAアクチュエータの出力において重要となるパルス通電加熱時の冷却速度の向上について検討を行なった。SMAアクチュエータを作製し、可動部の空冷に加え、液体を充填した場合による冷却の効果を評価した。また、皮膚下の触覚受容器が感知しやすい15 Hz以上の周波数域でのパルス通電駆動の最適条件を調べた。液体を充填したものでは、形状回復温度(~65℃)に達するまでの熱量は空冷の場合に比べ約4倍必要であることがわかった。また、充填した液体の温度が徐々に上昇する影響で、周波数15 Hz以上では空冷の場合と同様に冷却が律速して発生力が減少することがわかり、加熱および冷却速度のさらなる向上が引き続き課題である。 また、2層のSMAアクチュエータを接合することで発生変位の倍増を目指し、感光性レジストで形成したキャップ層とSMAアクチュエータを接合し、さらに初期変位用の層間のスペーサを介して2枚のSMAアクチュエータを接合するプロセスの検討をした。層間のパーツを介して2枚のSMAアクチュエータ同士を良好に接合する手法を確立したが、ダミー基板からキャップ層およびSMAアクチュエータを剥離する際の固着が生じることにより、トータルの作製歩留まりの向上が課題であることがわかった。 高出力化による振動刺激提示を目的とし、熱応答によるSMAアクチュエータの出力低下を考慮して、低下した場合でも高出力が可能な触覚ディスプレイに向けたバイアスばねの再設計を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SMAアクチュエータのパルス通電時の熱応答向上を目指し、作製したSMAアクチュエータに液体を充填したが、皮膚下の触覚受容器が高感度に知覚する15 Hz以上では空冷の場合と同様に冷却が律速することが判明し、SMAアクチュエータの熱応答のさらなる向上に引き続き取り組んでいく必要がある。 また、SMAアクチュエータ作製や感光性レジストによるキャップ層の作製に期間を要し、ダミー基板からの剥離時における歩留まりの向上や形成プロセスの簡易化等は十分に検証されておらず、次年度への課題である。
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今後の研究の推進方策 |
キャップ層、フレーム層およびバイアスばね層の形成プロセスの簡易化を進め、作製歩留まり向上を目的とした形成プロセスの最適化を行っていく予定である。また、SMAアクチュエータとバイアスばねを接合したプロトタイプの素子を試作し、パルス通電加熱によるSMAアクチュエータの動作振幅の評価に取り組む。官能評価実験を行い、振動パターンによる触感や記号などの触覚情報提示の可能性についても評価を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた装置(スピンコータ)を自作により良好に立ち上げられ、代替可能であったことにより、当初予定していた分の予算を執行していない。また、令和3年度に発表を行った国際学会の発表がオンライン形式となったことから当初予定していた旅費分の予算も執行していないため、令和4年度に繰り越しを考えている。令和4年度ではデバイス作製時に必要となるアッシング装置の導入や学会発表での参加費・旅費に充てる予定である。
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