研究課題/領域番号 |
21K14138
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤井 勇介 東京工業大学, 工学院, 助教 (70882356)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 1軸制御形ベアリングレスモータ / 磁気支持 / 磁気軸受 / 永久磁石形モータ / 三相四線式インバータ / 零相電流 |
研究実績の概要 |
本研究は,回転子のスラスト方向のみを位置決め制御し,残りの並進・傾き方向が受動支持される「1自由度制御形のベアリングレスモータ」を対象とする。当該分野において「高出力化」が課題であり,本研究では,これまでにない1kW出力を目指す(従来は100W程度)。 モータ性能として1kW出力を達成し,かつ十分なスラスト力と受動支持の高剛性化を実現するために,モータユニットを「4極6スロット」および「8極12スロット」の2パターンで検討し,さらに1万rpm時にトルク1Nmを出力する「高トルクモデル」と,2万rpm時にトルク0.5Nmを出力する「高速モデル」を検討した。高トルクモデル,高速モデルのいずれにおいても,8極12スロットモデルは,4極6スロットモデルに対して大きなモータトルクを発生し,高速モデルでは,高トルクモデルよりも小形化に優位であることを有限要素法解析により示した。 磁気支持性能を,上記と同様に検討した。スラスト力の評価として,単位支持電流あたりに発生する支持力係数[N/A]と,支持力のリプル率%(低いほど良い)に着目した。いずれのモデルにおいて目標支持力係数の10N/Aを達成した。また,4極6スロットモデルの支持力リプル率は10%と大きいが,8極12スロットモデルにすることでリプル率が5%まで低減した。 最後に,回転子の並進および傾き方向の受動支持を担う「受動磁気軸受ユニット」の設計を行った。このユニットは,回転子両端および固定子両端の反発形永久磁石から構成される。高速回転時の回転子タッチダウンを回避するために,エアギャップを2mmと大きくしている。そのため,反発力が低下するため,目標の受動剛性より10%ほど不足している状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の当初予定は,従来の1軸制御形ベアリングレスモータの課題である「小形・低コスト化」と「高出力化」のトレードオフ関係を打破する1)ベアリングレスモータの提案,2)有限要素法解析に基づくベアリングレスモータ設計,3)さらには製作であった。 1)の提案に関しては,すでに完了している。モータ結線を三相四線式とし,零相電流をスラスト磁気支持に応用することで,追加のパワースイッチングデバイス不要かつ,モータベクトル制御可能なベアリングレスモータシステムを構築した。モータ駆動およびスラスト支持電流の制御性を回路シミュレータにより検討し,それぞれ独立に制御可能であることを示した。 2)の有限要素法解析に基づくベアリングレスモータ設計に関しては,研究実績の概要で述べたように,モータ性能・スラスト磁気支持性能・受動支持性能の設計がおおむね完了した。しかし,受動支持に関しては,永久磁石の配置,磁気回路設計を再検討することで,さらなる改善の余地がある。 3)製作に関しては,2)の受動支持性能のさらなる改善が完了次第,取り組む。 以上の理由から,製作が1~2カ月ほど若干遅れているが,これ以外の予定はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の取組みで課題となった「受動支持性能の改善」に取り組む。具体的には,永久磁石の配置,磁気回路設計等を再検討する。これとは別に,新構造の受動支持システムも検討する。これまで検討した構造では,反発形永久磁石から構成される受動支持ユニットと,スラスト磁気支持力を発生するユニットは別々に配置されていた。そのため軸方向に長い構造となっていた。また,多量の反発形磁石も受動支持のみに使用されていた。そこで,反発形磁石の磁束を,スラスト磁気支持力のバイアス磁石としても利用できる新構造を検討する。これが実現できれば,今まではモータ・スラスト・受動支持の3ユニットから構成されたシステムが,モータ・スラスト兼用受動支持の2ユニットに短縮できるため,小形化に寄与する。十分な性能が達成される場合は,2ユニットモデルを製作する。 上記の最終モデルを製作し,実証試験を行う。1軸制御形ベアリングレスモータが1kW出力を達成した例はなく,製作時の組立て手順が重要である。組立時には,不安定方向のスラスト力に対して,治具等を用いて回転子を挿入する。また,タッチダウン機構にも工夫が必要である。最終目標である1kW出力を測定するために,負荷試験装置を構築する。一般的なモータの負荷試験では,試験モータに対して負荷用モータを配置するが,ベアリングレスモータの場合,回転軸そのものが浮上しているため,負荷用モータ接続することができない。そこで製作したベアリングレスモータの回転軸にファンを装着し,負荷をかける。以上の準備を全て整えた状態で,高速対応のトルクメータを用いてトルク測定を行い,本提案モータの最終評価を行う次第である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,2021年度に参加予定であった国際学会が中止となり,その分の予算が余ったためである。そのため,2021年度には,この学会費の一部を物品費に使用したが,最終的には,94,321円が生じた。 翌年度は,この金額分を国際学会参加費用に割り当てる予定である。
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