研究課題/領域番号 |
21K14141
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
児玉 直人 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80828971)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 限流ヒューズ / 直流遮断 / 消弧媒体 / アーク |
研究実績の概要 |
DC限流ヒューズの高遮断容量化は,EVなどのDC回路保護のために必須である。ヒューズの高遮断容量化のためには,事故電流の遮断過程でヒューズ内部で生じるアークの抵抗(rarc)を上昇させることや,事故電流遮断後のヒューズ両端の絶縁抵抗を高く(数MΩ以上)保つことが必要である。従来の限流ヒューズでは,rarcを高めるために珪砂が用いられてきた。 本研究では,珪砂に加えて,高分子材を併用することでrarcの上昇および高絶縁抵抗の維持が可能な手法を開発することを目的とする。 初年度は,以下を行った。 1) 銅/珪砂/高分子材混合気体の高温ガス特性計算:本研究で生じ得るアークの特性を理論計算した。その結果,銅アークに対して珪砂蒸気が混入することで,アークの抵抗率が低下することがわかった。一方で,銅/珪砂蒸気に対して光硬化性樹脂を想定した高分子蒸気が混入することで,抵抗率が上昇することがわかった。 2) ヒューズエレメント周囲への高分子材製狭隘部の配置によるDC遮断実験:銅製のヒューズエレメント周囲に光硬化性樹脂製の狭隘部付き円筒を配置し,アーク消弧実験を行った。その結果,狭隘部配置によりrarcは上昇し,絶縁抵抗も数10 MΩまで上昇する傾向が得られた。これらのrarcや絶縁抵抗は,狭隘部の形状によって変化した。rarcおよび絶縁抵抗の上昇要因として,①高分子蒸気混入によるアークの抵抗率上昇,および②高分子溶発に伴い生じたガス流によるアークの拡散が考えられる。 3) アーク電圧の非接触センサの開発:研究室内で以前から開発を進めていた電圧の非接触センサを用いてアーク電圧などの非接触測定を試みた。しかしながら,アーク由来のノイズ等の影響で,正確な測定が困難であった。測定で得られた信号に対してFFTやウェーブレット変換信号処理などを行い,S/N比を改善することで,測定精度が改善する傾向が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
珪砂/銅/高分子材混合アークの高温ガス特性の計算がおおむね終了し,新規の直流アーク消弧方法開発の指針が立てられた。また,2021年度の実験により,高アーク抵抗と高絶縁抵抗を両立可能なヒューズ形状の指針を得ることができた。よって,研究は概ね順調に進呈していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の結果を踏まえ,2022年度は,1) アーク抵抗と絶縁抵抗をさらに上昇可能なヒューズエレメントおよびヒューズリンク形状の探索,2) アーク電圧の非接触センシングにおけるノイズの問題に対する,ベイズ統計を用いたノイズキャンセリングの適用,および3) ヒューズ内部現象の数値シミュレーション手法の開発を進める。以上を行うことで,ヒューズ内部現象の更なる理解や,高遮断容量化につなげる。
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