本研究では,珪砂に加えて,高分子材を併用することでアーク抵抗の上昇(つまり、アーク遮断時間の低減)および高絶縁抵抗の維持が可能な手法を開発することを目的とする。2023年度は,以下を行った。 1) エレメント形状の検討:遮断に適したエレメント形状を検討するために、銅製のヒューズエレメントの形状と抵抗値を変えた遮断実験を行った。その結果、抵抗値が小さいヒューズエレメントを用いた場合にはアーク点弧電流が上昇してアークが点弧する時間が遅くなった。一方で、遮断時間はエレメントの抵抗値によらず同程度であった。従って、抵抗値が小さいヒューズエレメントを用いることで、アーク点弧から遮断までの時間は低下した。 2) X線CTを用いたフルグライトの観察:上記の原因を検討するために、X線CTを用いてフルグライトの内部に生じるアークチャネル形状を観察した。その結果、ヒューズエレメントの抵抗値が小さい場合には、アークチャネル径が若干細くなることが判明した。従って、1)で得られた遮断時間の低減は、アークチャネル径が細くなったことでアークコラム抵抗が上昇したことが原因であると考えられる。 3) アークの電気抵抗率の実験的推定法の開発:実験的に得られた電流値や電圧値、およびアーク形状から、アークの電気抵抗率を推定可能な方法を検討した。 以上の結果から、エレメント形状を適切な抵抗値に設定することで更にアークのチャネル(導電)径を制御可能であり、これと高分子材狭隘部の溶発現象を併用することで、さらなるアーク遮断時間の短縮が見込まれる可能性がある見通しを得た。 4) ヒューズ内でのアーク消弧後の電気絶縁性能を検討するために、アーク消弧後に残留する高温ガスの耐電界特性を理論的に導出した。
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