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2021 年度 実施状況報告書

寄生インピーダンス推定技術に基づく電力変換器用ノイズフィルタの最小体積設計の実現

研究課題

研究課題/領域番号 21K14145
研究機関成蹊大学

研究代表者

高橋 翔太郎  成蹊大学, 理工学部, 助教 (00896566)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2023-03-31
キーワードEMI / コモンモード / インダクタ / 浮遊容量 / 複素透磁率 / 電磁ノイズ / 電力変換器 / EMIフィルタ
研究実績の概要

本研究の目的は,周波数特性を考慮したノイズフィルタの最小体積設計法の確立である。従来のノイズフィルタ設計は,体積の最小化を目的とし,素子は寄生インピーダンスを有さない理想部品として扱う。その結果,試作したフィルタが数MHz以上の帯域で要求される減衰量を満たせず,試作・設計回数の増加やノイズ対策部品の追加(フィルタ体積・コストの大幅な増加)を招いている。このような背景を踏まえて,インダクタに生じる寄生インピーダンス推定技術を確立し,それに基づくフィルタの周波数特性評価手法を開発する。この手法を,フィルタの最小体積設計法に組み込むことで,ノイズ規制帯域(150 k~30 MHz)に渡り,要求減衰量を満たす最小体積のノイズフィルタを得る設計法を確立する。本研究成果により,フィルタ試作・設計期間の大幅な短縮を実現できる。
令和3年度においては,ノイズフィルタ用インダクタに生じる浮遊容量の推定手法についての検討に注力した。まず最も基本的なフィルタ用磁気部品として,トロイダルインダクタを検討対象とし,巻線とコア間の絶縁体を考慮した浮遊容量推定法を考案した。さらに,考案した推定法を,2巻線を同極性にコアに施すことで製作する単相コモンモードインダクタに適用が可能な方式へと修正した。修正した浮遊容量の推定法と,磁性材料が有する複素透磁率の周波数依存性に基づき,コモンモードインダクタの小信号に対する周波数特性を1 kHzから50 MHzまでの広帯域に渡り精度よく再現できる解析モデルを考案した。モデルを活用することで,電力変換器が発生する電磁ノイズに対するフィルタの減衰特性を,設計段階において広帯域かつ高精度に把握できることが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

はじめに,最も基本的なフィルタ用磁気部品として,トロイダルインダクタを検討対象とし,巻線とコア間の絶縁体を考慮した浮遊容量推定法を考案した。推定した浮遊容量をインダクタの解析モデルに代入することで,インダクタの周波数特性を50 MHzまでの帯域で再現できる。推定法の妥当性は,ナノクリスタル,カルボニル鉄ダスト,アモルファスなどを用いて製作したインダクタの測定結果との比較により示した。さらに,考案した推定法を,2巻線を同極性にコアに施すことで製作する単相コモンモードインダクタに適用が可能な方式へと修正した。修正した浮遊容量の推定法と,磁性材料が有する複素透磁率の周波数依存性に基づき,コモンモードインダクタの小信号に対する周波数特性を再現できる解析モデルを考案した。モデルが1 kHzから50 MHzまでの広帯域に渡りコモンモードインダクタのコモンモードに対する周波数特性を精度よく再現できることを,MnZnフェライト,ナノクリスタルを用いて製作したコモンモードインダクタの測定結果と比較することで実証した。

今後の研究の推進方策

電磁ノイズ評価用システムとして,0.75 kWのモータ駆動システムを構築した。システム各部のインピーダンスを測定し,周波数領域におけるシミュレーションモデルを汎用回路シミュレータLTspice上に構築した。令和4年度においては,検討対象システムのモデルにノイズフィルタ構成部品のモデルを組み込み,シミュレーションにおいてフィルタ減衰量を再現できるモデルを構築する。モデルに基づき,要求減衰量を満たし,最小の体積を有するノイズフィルタ設計フローを確立する。また,設計フローに浮遊容量推定法を組み込み,フィルタ用インダクタの体積と周波数特性の関係について明確化する。
ノイズフィルタ実装時には,近接する部品間の磁気的結合により,フィルタ全体の減衰量が劣化することが予想される。このような,部品間結合によるフィルタ性能の低下についての基礎的な検討についても実施を予定している。また,浮遊容量推定法を用いて,磁性コアに巻線を施す前の設計段階において,推定した浮遊容量を小型の追加部品によって等価的にキャンセルする手法についても,実験的な検討をおこなう。

次年度使用額が生じた理由

申請時,フィルタ部品の周波数特性測定用のネットワークアナライザとして,Tektronix社製のTTR550の購入を想定し,設備備品費として計上していた。令和3年度において,測定可能周波数などの仕様が本研究により合致したOmicron Lab社製ネットワークアナライザBode 100を購入したため,これらの差額として余剰金額が生じた。また,関連学会への出席のために国内および海外旅費を計上していたが,令和3年度において参加した学会はすべてオンライン開催であったため,旅費は生じなかった。上記余剰金については,今年度オンサイト開催が予定されている電気学会産業応用部門大会および研究会の参加費・旅費として使用を予定している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Wideband Small-Signal Model of Common-Mode Inductors Based on Stray Capacitance Estimation Method2022

    • 著者名/発表者名
      Shotaro Takahashi, Sari Maekawa
    • 雑誌名

      IEEJ Journal of Industry Applications

      巻: 11 ページ: 514-521

    • DOI

      10.1541/ieejjia.21010626

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 巻線とコア間の絶縁体を考慮したトロイダルインダクタに生じる浮遊容量の簡易推定法2021

    • 著者名/発表者名
      高橋翔太郎,和田圭二
    • 雑誌名

      電気学会産業応用部門論文誌

      巻: 142 ページ: 33-40

    • DOI

      10.1541/ieejias.142.33

    • 査読あり
  • [学会発表] 巻線構造に基づくコモンモードインダクタの性能比較2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木陸矢, 高橋翔太郎, 前川佐理
    • 学会等名
      令和4年電気学会全国大会
  • [学会発表] 浮遊容量推定法に基づくコモンモードインダクタのモデリング2021

    • 著者名/発表者名
      高橋翔太郎, 前川佐理
    • 学会等名
      令和3年電気学会産業応用部門大会

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公開日: 2022-12-28  

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