本研究では、交流電気鉄道において電気設備等の諸条件の制約を考慮しつつ数値実験を行うことで、消費エネルギーが少なくなる「省エネルギー走行パターン」を明らかにすることが目的である。 研究遂行にあたり、列車の走行パターンと消費エネルギーの関係を分析するための数値実験モデルを作成した。ここでは車両の力学運動と電力の計算を連成して行うとともに、後の考察で必要な複数列車の走行モデルも検討した。このモデルによる数値実験により、近年よく知られている直流電気鉄道での省エネルギー走行の一般論を、必ずしも交流電気鉄道には適用できないことを明らかにすることができた。本研究の交流電気鉄道における電力の計算では、回路モデルにおいて電圧不平衡を評価できるように工夫し、電力の消費と回生が不平衡にどのように影響するのかを調べた。さらに、具体的なパラメータを入力することにより車両負荷の大きさが及ぼす影響についても考察することができた。一方、力学運動の計算については最適化手法を取り入れることを試み、所望する結果を得ることができた。 また計算モデルの妥当性を確認するために、国内の交流電気鉄道の走行パターンと消費エネルギーの関係を実態把握するための調査ならびに測定法の研究も実施した。簡易的な装置で精確に車両のデータを得る方法を考案し、その方法論をまとめた。さらに今後の詳細データ取得に向けて、国内鉄道事業者の協力も得てフィールド調査を実施することもできた。 以上の取り組みにより一定の成果を得ることができ、さらに今後の研究課題を見出すことができた。
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