研究課題/領域番号 |
21K14163
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
遠藤 寛之 国立研究開発法人情報通信研究機構, 量子ICT協創センター, 研究マネージャー (50809704)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 物理レイヤ暗号 / 衛星光通信 / 情報理論的安全性 |
研究実績の概要 |
今年度は、物理レイヤ暗号(秘密鍵共有)の実用的なシステム設計に必要となる、有限の信号を伝送する場合における鍵生成効率の解析手法を構築した。また、この解析手法を用いて、衛星光空間通信を想定した数値計算を実施した。従来の物理レイヤ暗号の研究開発では、無限に信号を伝送できるとする理想的な状況を想定した解析手法が用いられていたが、本研究開発で見出した解析手法を用いることで、実用的な性能評価が可能となる。また、数値計算からは、現状の技術的水準を鑑みて現実的に伝送可能な数の信号からも、衛星-地上局間での情報理論的に安全な秘匿通信が物理レイヤ暗号で可能であることが見出された。現在、これらの成果について論文を執筆中である。 合わせて、盗聴者の盗聴能力が制限されているという物理レイヤ暗号と同様の状況に、量子鍵配送における証明手法を適用させることにより、衛星-地上局間での情報理論的に安全な秘匿通信を実現するための、新しい鍵共有手法の開発に成功した。本成果について執筆した論文が物理関係の国際誌に掲載された。 本手法は物理レイヤ暗号よりも一般的な盗聴モデルをカバーしているが、一方で、伝送可能距離や鍵生成速度といった鍵生成性能は若干劣ったものとなる。そのため、空間光通信路の状況や求められるパフォーマンスといった性能基準に基づいてこれらの鍵生成手法を適切に使い分けることによって、幅広い状況に対応することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物理レイヤ暗号の実用的な解析手法を確立し、衛星光通信用の新しいプロトコルを開拓するとした、提案時に掲げた課題はほぼ達成されていると判断できる。一方で、今年度は理論的な研究に集中したため、実験系の構築などは若干の遅れが見られる。これらを総合的に加味して、上記の判断を下した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、物理レイヤ暗号の解析理論に関する論文の執筆を続けると共に、物理レイヤ暗号及び新しい鍵共有技術の実証実験を行うための実験系の構築やそれを用いたデータの取得などを実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は理論的な研究に大きな躍進があり、確かな成果が得られる目途があったため、そちらに集中した。また、社会情勢の影響などもあり、実験研究に十分な時間を割けなかった。そのため、実験系の構築などは次年度に実施するものとした。
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