研究課題/領域番号 |
21K14172
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
巫 霄 福岡工業大学, 工学部, 助教 (20825351)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イオン液体 / 非荷電味物質 / 膜インピーダンス |
研究実績の概要 |
本研究では、味覚センサを用いたインピーダンス測定法により、非荷電苦味物質の検出を試みた。昨年度は、従来の脂質高分子膜を使用して、非荷電や弱電解質の味物質の吸着による膜インピーダンスの変化を検出する試みを行った。今年度は、非荷電の苦味物質の検出を目指し、電気伝導性が優れるイオン液体であるTrihexyltetradecylphosphonium hexafluorophosphate (TPHP)とTrihexyltetradecylphosphonium decanoate (TPDO)を膜材料として使用した。具体的には、インピーダンス測定装置を用いて、非荷電苦味物質であるN-phenylthioureaの測定を行った。また、比較のために電解質の苦味物質であるイソα酸も測定した。さらに、膜の疎水性が非荷電苦味物質の検出に与える影響を調査するため、センサ表面の接触角も測定した。実験結果から、非荷電苦味物質の濃度が高いほど、測定値(CIA、Change of membrane Impedance caused by Adsorption)も高くなる濃度依存性が確認された。また、イソα酸の測定では、イオン液体の濃度に関係なく、一貫してTPDO膜の方がTPHP膜よりも高い測定値を示した。一方、非荷電苦味物質のN-phenylthioureaの測定では、イオン液体の濃度が低い場合にはTPDO膜の方が高い応答を示したが、濃度が高い場合にはTPHP膜の方が高い応答を示した。この現象は、イオン液体の陰イオンの種類の違いによるものであり、膜内のキャリアの移動が影響していると考えられる。さらに、イオン液体の濃度が高いほど、膜全体のインピーダンスが低下し、接触角も小さくなることが明らかになった。これは、膜内のキャリアの増加が原因であり、膜表面の疎水性が低下することを示している。本年度では、濃度依存性や膜の疎水性の影響が明らかになったが、イオン液体の組成による違いについては詳細な調査が必要である。さらに、人間の感覚閾値付近でも検出できるように、膜全体のインピーダンスを低下させる手法が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、複数のイオン液体を使用して膜を作製することができた。また、予定通り非荷電の苦味物質を測定し濃度依存性を示した。ただし、低濃度域において感度が低いことに課題がある。次年度では、イオン液体の種類や電極構造についてさらなる検討を行い、この問題を解決する予定である。したがって、「進展はおおむね順調」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、試薬の濃度が人間の感覚閾値付近でも検出できることが求められるため、膜のインピーダンスを低下させつつ、強い疎水性を維持する改善策を考慮する必要がある。また、液体膜に比べて構造的に安定性が高く、濃度の低い試薬でも高感度な検出が可能な固体膜を使用することが考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の予定では、イオン液体の選定や固体膜電極の作成に必要な資金を使用し、研究の進展や成果の向上を目指すことが計画されている。イオン液体の選定には、異なる特性を持つ複数のイオン液体を比較し、目的に適した特性を持つものを選定するための評価や分析が必要となる。これには、イオン液体の調製や物性評価などにかかる費用が発生することが考えられる。また、固体膜電極の作成には、特定の材料や製造技術を使用する必要がある。固体膜電極の設計、材料の調達、加工、評価などにかかる費用が予定されている。
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