研究課題/領域番号 |
21K14173
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
細木 藍 富山大学, 学術研究部理学系, 特命助教 (30748835)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヘテロコア光ファイバ / バイオセンサ / 局在表面プラズモン共鳴 / DNA |
研究実績の概要 |
本研究では、極微量の標的核酸を直接高感度に検出するための新たな技術基盤として、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)の励起に必要なエバネッセント光を容易に生じさせることができるヘテロコア光ファイバと、プローブ核酸を修飾した金ナノ粒子とを組み合わせた革新的バイオセンサの構築を目指す。 令和4年度は、ヘテロコア光ファイバセンサ表面上に形成した金薄膜や金ナノ粒子上へのプローブ核酸の修飾方法を検討し、DNAセンサを試作した。具体的なセンサ作製手順は以下の通りである。まず、10-カルボキシ-1-デカンチオールを用いて、金薄膜を形成したヘテロコア光ファイバ上にカルボキシル基を導入した。次に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)とN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の混合液に浸して、センサ部のカルボキシル基を活性化させた。最後に、アミノ基が修飾されたDNA(pDNA)溶液に浸し、センサ部のカルボキシル基とDNAのアミノ基との共有結合によって、DNAを固定化した。相補的なDNA(tNDA)と相補的でないDNA(Non-tDNA)に対する光損失スペクトルを白色光源と分光器を用いて計測した。 1μMのpDNAを固定化したセンサのtDNA(100 pM,10 nM,1μM)に対するセンサーの応答を評価したところ、tNDAの濃度増加に従って、波長570nm付近において光強度が線形的に減少する様子を確認できた。一方、Non-tDNAやTE(pH8.0)に対しては、光強度の変化は観測されなかった。以上の結果から、本センサによってDNAを検知可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、金薄膜や金ナノ粒子のヘテロコア光ファイバセンサ表面上への固定化方法の検討と、標的DNAの検知可能なセンサの構築を計画した。 評価実験として、金薄膜を形成したヘテロコア光ファイバ表面上にプローブ核酸を修飾し、20塩基程度の標的DNA(100 pM,10 nM,1μM)に対するセンサ応答を計測した。その結果、標的DNAの濃度増加に従って、波長570nm付近において光強度が線形的に減少することを確認できた。ヘテロコア光ファイババイオセンサの構築が可能となったことから、本研究の計画を順調に進めているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、特殊ファイバを用いて作製したヘテロコア光ファイバによる標的核酸の検出感度を調査し、マルチモード伝送しやすい近赤外領域でも動作可能なバイオセンサの構築を目指す。 具体的には、以下の項目に取り組む。 1)塩基数の違いによる標的核酸に対する検出感度の検討:30~100塩基程度のビオチン化DNAと標的DNAをそれぞれ用意し、お互いが相補的である場合とそうでない場合の光損失スペクトルの比較を行う。また、標的核酸の濃度の違い(数aM~数fM)や塩基数の違いによる検出感度を調査し、本センサで極微量として捉えられる濃度や塩基数などを明らかにする。 2)粒径が異なる金ナノ粒子や、近赤外光領域の波長850nm付近に吸収波長を持つ金ナノロッドを用いて、高感度に検知可能なナノ粒子の選定を行う。
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