本研究の目的は、光ファイバによる革新的バイオセンサの構築である。極微量の標的核酸を直接高感度に検出するための新たな技術基盤として、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)の励起に必要なエバネッセント光を容易に生じさせることができるヘテロコア光ファイバと、プローブ核酸を修飾した金ナノ粒子とを組み合わせた手法で進めた。前年度までは、金薄膜による表面プラズモン共鳴(SPR)型のヘテロコア光ファイババイオセンサを検討した。最終年度は、金ナノ粒子や金ナノロッドによるヘテロコア光ファイバDNAセンサを構築し、評価した。前年度までに確立したプローブ核酸の修飾方法(ペプチド結合)を用いて、金ナノ粒子へのプローブ核酸の固定化を試みた。その結果、プローブ核酸の修飾に伴う光損失スペクトルの変化を確認できた。さらに、標的核酸の濃度の違いによる検出感度を調査し、本センサで極微量として捉えられる濃度を明らかにした。 一方、センサ感度やセンサ作製の再現性には課題が残った。そこで、ビオチン-アビジン複合体などによるプローブ核酸の修飾方法も検討したが、劇的なセンサ感度の向上は見られなかった。また、初年度に開発した偏波保持ファイバ(PMF)を用いたヘテロコア光ファイバセンサや近赤外光領域に吸収波長を持つ金ナノロッドへの本手法の適用も試みた。これらセンサ作製に想定よりも時間を要したため、塩基数の違いによる標的核酸に対する検出感度の検討までは進まなかった。円筒形の光ファイバへのプローブ核酸までの修飾過程がセンサ感度や安定したセンサ作製に影響を与えると考える。そのため、光ファイバを脱着可能な専用のフローセルの開発も進めている。本研究によって、LSPR/SPRによるヘテロコア光ファイババイオセンサの基盤技術を確立できた。
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