本研究では、波長が異なる複数のレーザーを用いて、奥行き方向にマルチスケールの高精度3次元動的計測が可能な校正型位相シフトデジタルホログラフィシステムを開発する。初年度、473nmと532nmのレーザーを使用して、不連続物体に対して奥行方向に最大2.1μmの計測範囲のシステムを実現した。しかしながら、応用展開として加熱プレートを用いて市販されている電子デバイス基板の熱変形を計測する際に、変形量が大きすぎかつスペックルノイズが非常に強いという問題があった。そのため、本年度はまず633nmと640nmのレーザー光源を導入することにより、面外方向の計測範囲を28.9μmまでに向上させた。さらに、ガウス窓付きフーリエ変換法を導入して、再生された物体像のランダムノイズを低減することに成功した。多波長位相シフトデジタルホログラフィに対して、異なる波長の物体光を同時に一つのホログラムに記録するため、フーリエ面おいで各波長の物体光のスペクトルの大きさと位置が異なる。初年度、各波長の物体光のスペクトルを自動抽出、サイズ補正アルゴリズムを提案し、計算機シミュレーションによってその有効性を検証した。本年度では、相関関数などを用いて提案したアルゴリズムを改良し、実験に適用することで提案システムの効率を大幅に向上させた。本研究は、多波長レーザーの位相シフトを同時に行い、奥行き方向の計測範囲が広く、高精度な面外変形計測が可能であり、工業検査など様々な分野への応用が期待できる。
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