研究課題/領域番号 |
21K14176
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
Zhu Junfang (朱俊方) 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (70805134)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 微小力 / 電磁力 / キッブルバランス法 / 力計測技術 / 力発生技術 / 微小力計測 / 精密計測 |
研究実績の概要 |
本研究では、医療・食品、バイオテクノロジー、ナノ物質・材料等の幅広い分野で行われている微小力計測の信頼性を向上させるため、キッブルバランス法の原理を応用した精密な微小力計測技術の開発を目指す。キッブルバランス法は、磁場に置かれている導体に電流を流した際の電気的仕事率と、ある速度で導体を動かした際の機械的仕事率を釣り合わせる手法である。当該年度は、研究代表者はキッブルバランス法の原理を応用できる新たな装置の構造を提案し、従来のキッブルバランスと違い、支点を用いず摩擦が極めて少ない、磁石の直線運動型の電磁力式微小力発生装置を開発した。本装置は、二つの測定モードがあり、それぞれ誘導起電力測定モード(動的モード)と力発生モード(静的モード)と称す。本装置の開発にあたって、具体的に下記に述べる項目を実施した。①負荷枠、コイルジグ、コイル等の自重を液体中にある浮力体の浮力で打ち消す釣り合い機構を考案し構築した。②圧縮空気を利用する無接触のリニアガイドを製作し導入した。③永久磁石による円筒型磁気回路を設計し製作した。④磁石の直動速度・位置計測系と負荷枠の位置計測系を、リニアエンコーダ等を用いて構築した。⑤精密に位置決めできる自動ステージ・手動ステージを導入し、力発生モードで微小力計に精密な力を負荷するための微小力昇降機構を開発した。⑥磁石の直線運動機構や微小力計昇降機構の制御システムを構築した。本研究で開発した装置と別途整備の微小力計を用い、誘導起電力測定モードと力発生モードの二つの計測実験を行い、精密な微小力の発生・計測が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本装置の一部の部品(リニアエンコーダ(輸入品、イギリス産)等)は予定通りの調達が困難となり、誘導起電力と磁石の直動速度との比例係数である、微小力と電流との比例係数でもある磁束密度とコイルの長さとの積の評価は至らなかったが、当該年度までに磁石直線運動型の電磁力式微小力発生装置の本体を構築することができた。また、誘導起電力測定モードと力発生モードで測定実験を行う際に必要な磁石の直線運動機構や微小力計昇降機構の試運転もできた。現在は、前記の比例係数の評価ができるように準備を進めている。よって、本研究の目的であるキッブルバランス法の原理を応用した精密な微小力計測技術の開発に向けて、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本装置と別途開発整備する微小力計を用い、測定実験の実施を予定している。誘導起電力測定モードで、誘導起電力と磁石の直動速度を測定し、それらの比例係数である磁束密度とコイルの長さとの積を精密に評価する。評価した比例係数を用い、本装置での微小力と電流との関係を決定する。また、力発生モードで微小力計への負荷を実施し、測定結果の不確かさを評価する。精密な微小力計測技術を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:当該年度中に調達予定のリニアエンコーダ、円筒型磁気回路が次年度に納品され・支払いするとのことがあった。また、製作する機械部品の調整により予算額の変動があった。 次年度使用計画:リニアエンコーダ、円筒型磁気回路の支払い、計測制御システムを構築するための電気部品や微小力計に負荷するためのジグ等の機械部品の製作を計画している。
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