研究課題/領域番号 |
21K14186
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
木下 拓矢 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (80825323)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | データ駆動型制御 / データベース駆動型制御 / オフラインデータ生成 |
研究実績の概要 |
内閣府はAI技術のさらなる革新のため,ムーンショット型研究開発制度を提唱し,「自ら学習・行動し人と共生するロボットの実現」を掲げている。しかし,既存の技術では,教師データが存在しない未知領域では,AI技術の精度は保証されないため,未知領域におけるAI技術の限界を打破することが急務な状況にある。一方,制御工学の分野においても,同様の課題が指摘されている。制御系設計法については,これまで多数研究されているが,未知環境下では良好な制御性能を得ることが難しい。しかし,良好な制御結果を得るための初期データ取得のためには,様々な条件でのシステム運用が望ましいが,一方で,それに関わる人的コストが生じる。したがって,いかに初期データを「大量に」かつ「容易に」取得するかが,今後のAI技術発展の鍵となる。これが実現できれば,「データ収集・制御性能向上」という観点で大きなブレークスルーを起こすことが期待できる。 2021年度は,システム同定不要のオフラインデータ生成法について提案し論文として掲載された。この手法は,ブロック線図の線形性に着目し,ブロック線図の伝達関数の入れ替えるのみでデータをオフラインで生成できる手法である。一方,オフラインでデータを生成する際に課題となる,未知外乱の推定方法についても研究を進めた。具体的には,制御対象が未知という条件の下,独立成分分析を用いてシステム同定不要の未知外乱推定方法を提案している。このとき制御対象は線形時不変と仮定し,数値シミュレーションから提案法の有効性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,限られた初期データからオフラインでデータを生成することを基礎研究としており,2021年度はその基礎研究内容が論文採択された。なお,制御系設計においては,未知外乱の有無によってその制御性能が大きく変化するが,オフラインデータ生成においても,未知外乱が含まれている場合,良好にデータを生成することができない。この問題を解決する手法に着手し,線形時不変のシステムに対して未知外乱を推定する手法を提案し,その有効性を数値シミュレーションを通して確認した。なお,この手法については,SICE Annual Conference2021にて発表した。以上により,学術論文誌や国際会議に採択されたことから概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では線形時不変システムを中心に理論を構築した。しかしながら,産業界の多くは非線形時変システムであるため,2022年度はそれに対応するような理論を構築する。具体的には,制御系設計において,非線形システムに対して有効性が検証されているデータベース駆動型制御法の考えを用いる。データベース駆動型制御法は,学習機能を有しており,データが蓄積されれば制御性能が向上する特徴を有している。したがって,本研究のオフラインデータ生成にもこの考えを用いて,2021年度の基礎研究と組み合わせることにより,非線形系に対応できるように理論を拡張する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,コロナ禍の影響により,学会参加関係費用(旅費,参加費)が削減されたためである。次年度使用額は約3万円となっているため,今年度の論文投稿費用に充てる予定である。また,次年度予算全体の使用計画は,研究成果の発表に関する学会参加費やその旅費に充てる予定である。また,今年度は機械学習などを用いるためMatlab/SimulinkのToolboxの購入費用にも充てる予定である。
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