研究課題/領域番号 |
21K14189
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
増田 開 日本大学, 理工学部, 助手 (20801038)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 無人航空機 / ティルトウイング / モデル予測制御 |
研究実績の概要 |
計画どおりにクワッドティルトウイング無人機(QTW-UAV)に対して,拡張モデル予測制御(EMPC)を用いた自律飛行制御システムを設計した.設計した飛行制御システムは,従来提案されているH∞制御器やμ設計法などのロバスト制御器,モデル予測制御(MPC)を用いた飛行制御システムとの性能を数値シミュレーションにて比較を行い,有効性の検証を行った.数値シミュレーションでは,風などの外乱,機体質量や空力係数等のパラメータ誤差が与えるQTW-UAVの機体姿勢,目標追従等に与える影響を確認した.外乱の影響に関してはティルトウイングを上方に固定したホバリングモード(クワッドコプタモード),巡航モードにおいてそれぞれ検証を行った.まず,外乱の影響を受けやすいホバリングモードにおいて,機体の姿勢を1軸周りに低次元化を行い,従来の制御器とEMPCにおいて外乱に対する姿勢制御性能を比較した.EMPCは,従来手法と比較して優れた外乱の抑制性能を有していることを示した.全次元(6次元)の運動モデルを用いて,ホバリングモードにおける任意軌道に対する追従性能を検証した.EMPCを用いた飛行制御システムは従来の制御器を用いた飛行制御システムと比較して優れた追従性能を有していることを示した(国際学会口頭発表1件).また,ホバリングモードと巡航モード,両モードが混在する飛行パターンにおいて,従来の制御器とEMPCを用いた飛行制御システムの制御性能を数値シミュレーションによって比較した.風外乱等の影響に対して提案するEMPCを用いた飛行制御システムが従来のシステムと比較して,目標に対する追従性能が優れていることを示した(国内学会口頭発表1件).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した通り,EMPCを用いたQTW-UAVの新しい飛行制御システムの提案を行い,数値シミュレーションにより,詳細な解析を進めている.提案した飛行制御システムは,風などの外乱影響,機体質量や空力係数等の誤差,アクチュエータの動特性や精度等の様々な外乱影響に対して影響の確認をモンテカルロシミュレーション等も用いて解析を進めている.モンテカルロシミュレーションの計算環境は本助成金により導入したワークステーションを用い,計算による解析は順調に進展している.また,外乱に対するQTW-UAVの機体の姿勢制御や目標位置に対する追従性能の影響は,機体の各飛行モード,および複数の飛行モードが混在する飛行パターンにおいて,従来の制御器を用いた飛行制御システムよりも抑制が可能であることを確認している. これらの成果は,国内学会口頭発表,国際学会口頭発表において公開を行い,提案手法の有効性の理解が得られている. また,令和4年度以降に進める飛行試験に向けて,機体の実験機の開発を進めている.令和3年度は,本助成金により調達したマイクロコントローラ等を含む電子部品を使用し,制御システム基板及び電源管理系統の開発を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
研究の計画に大きな変更はなく当初の予定通りに研究を進める.今後は令和3年度で提案した飛行制御システムをQTW-UAVの実験機に実装し,飛行試験を進める.令和4年度は,機体の開発を主として行う予定である.機体製作の材料はCFRP及びEPPを使用し,同材料の加工に用いるCNC加工機を本助成金によって導入する.令和4年度に飛行試験機のプロトタイプの完成を目指す. また,機体製作と並行し,飛行制御システムの改善を進める.現状,EMPCを用いたQTW-UAVの飛行制御システムは,様々な外乱の影響に対する有効性が確認できたが,計測ノイズに対する制御性能の影響に対して改善の余地があることが確認できている.よって,今後,機体の製作に加え,飛行制御システムの改善と再検証を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により,学会発表がすべてオンラインとなり,旅費の支出が減少した.一方で,半導体部品の高騰により,機体製作のための物品費が予定より大幅に増加している.次年度以降,機体の製作が本格的に始動し,機体製作の物品費がさらに増加するため,繰り越した差額を用いる予定である.
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