高度に配向制御された層状物質のグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)薄膜は、電荷が存在しているにもかかわらず面内方向に沿う抵抗率は5×10^6 Ωm以上と絶縁体と表現してよいほど高い。この面内方向に沿った電荷輸送とそれによる電流を制御が可能になれば、二次元材料による電子素子の実現に加えて材料固有の性質を利用したノーマリーオフ動作という新たな機能と価値を創出できる。これまでにg-C3N4薄膜をチャネル材料とした金属-絶縁体-半導体(MIS)構造により、「絶縁体-半導体の界面付近に伝導電荷をエネルギー状態の数を超えて蓄積させ、面内方向に対して自由な電荷を存在させることができ電流に寄与させることができる」ことを実証している。 本年度では、引き続きp型およびn型g-C3N4薄膜をチャネル材料としたMIS構造において、面内方向に沿う電荷輸送制御に取り組んだ。p型およびn型チャネルにおいて、正孔および電子が伝導を担う電流の制御を実現でき、ON/OFF比が2.5桁程度のノーマリーオフ動作FETを実証できた。またそれぞれにおいて少数キャリアが伝導を担う電流も検出でき、g-C3N4薄膜がアンバイポーラ特性を示すことも明らかになった。他方では、チャネル幅の増加による電流増加を目指しリングゲート構造の電極配置を検討したところ、3桁を超えるON/OFF比を実現した。 g-C3N4薄膜の導電性制御も並行して検討した。代表者は高い配向性を得るために比較的高温で薄膜を作製しているため、化学量論比が理想からC過剰になってしまいそのアンチサイト欠陥が由来でp型半導体となる。作製時の雰囲気を純粋窒素から30%までの酸素混合ガスにすることにより、電子供与が起こるNHまたはNH2基を結晶内に取り込ませることができ、薄膜の導電性をn型半導体に変化させることができた。
|