研究課題
磁気記録素子の記録密度を向上させるため、漏れ磁束による素子間の干渉が少ない反強磁性材料の利用が検討されている。しかし効率的な反強磁性スピン配列制御技術は確立されておらず、実用化のための障壁となっている。研究代表者は、反強磁性スピン配列変調のために、反強磁性/強磁性相転移材料と圧電材料の組み合わせに着目した。この構造において、電界印加により誘起される圧電歪みを利用して反強磁性状態を強磁性状態に相転移させ、追加の歪みを印加することで強磁性スピン配列を変調させる。再び反強磁性状態に相転移させた際に、強磁性スピン配列を反映して、異なる反強磁性スピン配列が実現することを利用し、電界による反強磁性スピン配列制御手法を実証することを着想した。提案した手法では、一度強磁性状態を介してスピンを制御することから、強磁性スピン配列が圧電歪み操作により効率的に制御できることが必要である。種々の強磁性材料を代表的な圧電材料であるPMN-PT基板に成長し、電界によるスピン配列制御の条件を調査した。その結果、(011)面方位を有するPMN-PT基板を用いることで、強磁性薄膜が(422)に配向し、効率的に強磁性スピン配列の制御が可能であることを見出した。加えて、ゼロ電界に戻した際にスピン配列が二値性を有するためには、強磁性状態で発現する磁気異方性と、歪みの大きさのバランスを考慮することが必要であることが示唆された。また磁気異方性を人為的に制御できる磁性多層膜において、磁気異方性を系統的に変調させた時の電界による磁性変調効果を調査したところ、大きな磁性変調効果を得るためには、強磁性状態における磁気異方性の大きさを適度な値に調整することが重要であることも見出した。これらの結果は強磁性状態を介した反強磁性スピン配列制御を実現する上で、磁性層の設計のための重要な知見を与えるものと考えられる。
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Journal of Magnetism and Magnetic Materials
巻: 570 ページ: 170532
10.1016/j.jmmm.2023.170532