研究課題/領域番号 |
21K14199
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
茂藤 健太 九州大学, 総合理工学研究院, 特別研究員(PD) (70896191)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゲルマニウム / 多結晶 / 薄膜 / 金属コンタクト |
研究実績の概要 |
シーズである高移動度多結晶Ge薄膜を実デバイスに応用するためには、金属/多結晶Geコンタクトの制御が必須となる。一般に金属/Geの接合界面では、強いフェルミレベルピニングが生じるため、ショットキー障壁の制御(オーム性、整流性)が困難である。 本年度は、上記の理由から困難とされてきた多結晶p型Ge上のショットキー整流性コンタクトの形成に焦点を当て、研究に取り組んだ。 当研究室の保有するZrN直接堆積により単結晶p型Ge上に整流性コンタクトを得る手法を応用し、ZrN/多結晶p型Geコンタクトを作製した。ZrN/多結晶p型Geコンタクトの電流-電圧特性から明瞭な整流性が確認され、単結晶Ge基板上の結果と同様に多結晶Ge上でもショットキーコンタクトが形成可能であることが初めて示された。 また、結晶粒径の異なる多結晶Geを利用して、多結晶Geの結晶性が整流性に及ぼす影響を調査した。その結果、結晶粒径が大きい程、高い正孔障壁が得られることが判明した。多結晶Geの結晶粒径とデバイス特性の相関を直接的に示す重要な成果と言える。 さらに、コンタクト形成前の多結晶Geに対して、化学機械研磨(CMP)およびフッ素系プラズマ処理を施すことで逆方向電流が顕著に低減し、On/Off比が向上することが分かった。 現在までに得られている最大の正孔障壁高さは、0.49 eVと単結晶p型Ge上の結果と比較しても遜色のない値であり、多結晶Geの電子デバイス応用を開拓する成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の狙い通り、当研究室の保有するZrN直接堆積により単結晶p型Ge上に整流性コンタクトを得る手法を応用し、多結晶p型Ge上では初となる整流性コンタクトを実現した。 加えて、多結晶Geに対するCMPやプラズマ処理、多結晶Ge自身の結晶性(結晶粒径)が整流性に影響を与えることが分かった。これは、金属/多結晶Geコンタクトにおけるショットキー障壁を制御する上で重要なヒントになると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、多結晶p型Ge上にZrNを直接堆積することでショットキー整流性コンタクトを初めて形成することに成功した。今後、本成果をベースとして、整流性のさらなる改善や多結晶n型Ge上オーミックコンタクトの形成に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、現地およびオンラインのハイブリッド開催の学会に参加した。当初は現地参加を予定していたが、直前のコロナウイルス感染状況を鑑み、オンライン参加に切り替えた。そのため、現地参加に必要な旅費が不要となり、次年度使用額が生じた。 次年度分の助成金と合わせて、論文投稿や学会発表等の研究成果のアウトプット、継続的な研究遂行に必要な消耗品(電子ビーム蒸着用原料、スパッタリング用ターゲット、成膜用・プロセスチェック用基板、洗浄・エッチング用薬品、プロセスガス、真空・電子部品等)に使用することを予定している。
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