研究課題/領域番号 |
21K14203
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
浅田 聡志 一般財団法人電力中央研究所, エネルギートランスフォーメーション研究本部, 主任研究員 (70870509)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | SiC / バイポーラトランジスタ (BJT) / 少数キャリア移動度 |
研究実績の概要 |
本研究では、バイポーラ型SiCパワーデバイスにおいて、耐圧維持層に注入された少数キャリアの移動度決定を目指している。移動度決定手法としてバイポーラトランジスタ(BJT)を用いる方法を提案しており、R3年度における研究計画は、デバイスシミュレーション(TCAD)を用いた移動度決定手法の確立および詳細な実験内容の決定となっている。 具体的な実施内容は以下の4段階のようになる。 ① BJTのデバイスシミュレーション技術の獲得 ② シミュレーションによる少数キャリア移動度決定手法の確立 ③ 評価するBJTのデバイス構造の決定 ④ デバイス作製に必要となる物品の購入 ①では、TCADによるBJTの電気特性(Gummel Plot)のシミュレーション技術を獲得した。これによりコレクタ電流のベース電圧依存性の評価が可能となった。②では、コレクタ電流が、ベース層に注入された少数キャリアの拡散で律速されていることを利用し、コレクタ電流のベース電圧依存性から少数キャリア移動度を導出する手法を提案した。TCADを用いて、上記の電気特性から少数キャリア移動度を抽出したところ、設定した移動度とよく一致することを確認した。これにより原理上はBJTを用いることで少数キャリア移動度を導出できることを明らかにした。③では、移動度決定の際、誤差要因となるエピ膜のpn接合界面で生じる空乏層や高いベース拡がり抵抗による電流集中効果の影響を無視できるデバイス構造を提案し、次年度に作製するデバイス構造の詳細を決定した。④では、③で決定したデバイスの作製に向けて、フォトリソグラフィ用マスクおよびnpnエピ膜を設計して発注し、各物品が納品された。 以上のように、本年度は計画を満足する研究を実施できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R3年度は、詳細な実験内容の決定と実験実施に必要な物品の購入が目的であり、それらは滞りなく実施できたため。
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今後の研究の推進方策 |
3年間における研究計画は、大まかに以下のようになる。R3年度: デバイスシミュレーション(TCAD)を用いた移動度決定手法の確立および詳細な実験内容の決定。R4年度: 少数キャリア移動度の実験的決定およびモデル化。R5年度: 得られた移動度モデルを用いた様々なSiCバイポーラデバイス電気特性のシミュレーションによる再現。 よって、R4年度は実際にデバイスを作製・評価することで少数キャリア移動度を抽出する。また、R5年度は得られたキャリア移動度を用いてバイポーラデバイスをシミュレーションし、得られた値やモデル式の妥当性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画ではR3年度において、計5枚購入予定のSiCエピウェハを全て購入する予定であったが、R4年度に得られる実験結果の解析後に購入品を再考するのが無難であると考え、まずはSiCウェハを2枚購入した。これにより、SiCウェハ3枚分の購入金額が差額として生じた。
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