研究では、人間の感覚に影響を与えずに動作可能な圧力センサーの開発を目的とし、人間の本来の行動や動作を正確に計測する手法を確立するための研究を遂行した。具体的には、ナノサイズのメッシュ構造(ナノメッシュ)を利用する容量式圧力センサーを開発し、センサーを皮膚に貼り付けた状態で人間の皮膚感覚に及ぼす影響を除去することに成功した。皮膚感覚への影響を定量的に評価するために、センサー及び高分子フィルムを指に貼りつけて、貼り付けていない場合との把持力と比較した。その結果、わずか2ミクロンの高分子フィルムを貼るだけで14%把持力が上昇することに対して、開発したナノメッシュセンサを貼り付けても本来の把持力を維持できることを発見した。 さらに、常に外部と接触する指先への適用に向け、非常に薄いナノメッシュ保護層を実現した。素材の厚みを薄くすると皮膚の感覚は伝わりやすくなる。一方で素材を貫通するのに必要な力や素材が裂断する際の力は、素材の厚みに比例するため、薄い素材はより弱い力でも壊れやすい。またセンサーの表面をこすると、薄い素材は削られてなくなってしまうため、薄さと摩擦耐久性はトレードオフの関係にある。本研究では、ポリウレタンナノファイバに水溶性ポリマのポリビニルアルコールを溶解・浸透させることで、皮膚感覚に影響を与えないほどの極薄性と摩擦耐久性を両立させることに成功した。 本手法を用いることで、センサーを貼り付けた状態でも、本来の皮膚感覚を維持しながら外部と接触する際の圧力を計測することが可能となった。
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