研究課題/領域番号 |
21K14210
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宇佐美 茂佳 大阪大学, 工学研究科, 助教 (30897947)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 伝導度変調 / GaNパワーデバイス / OVPE法 / pnダイオード |
研究実績の概要 |
OVPE法で作製した高キャリア濃度GaN自立基板を利用することでGaNpnダイオードにおいて大規模な伝導度変調が観察され、オン抵抗の大幅な減少が達成されている。しかしながら、その詳細なメカニズムは明らかとなっておらず、どこまで制御可能な現象かもわかっていない。そこで、本研究では1)極低抵抗かつ低転位密度なOVPE自立基板作製し、2)その基板上に作製したpnダイオードの電気特性および、3)素子断面の発光を評価することによって、伝導度変調機構の解明とその制御に取り組んでいる。 令和3年度は研究計画の通り、極低抵抗OVPE自立基板開発およびOVPE基板上のMOVPEエピ成長、評価装置立ち上げに取り組んだ。OVPE基板の極低抵抗化にあたり、V/III比および成長圧力をダイナミックに変更することで、結晶性を維持したまま酸素含有量をさらに高めることに成功した。キャリア濃度は従来よりも約2倍となり、GaNでは最も低い基板抵抗率 4.8×10^-4 Ωcmを実現した。また、OVPE基板上のMOVPE成長に着手したところ、OVPE基板界面から高密度のピットが発生し、断面発光観察に必要なサイズの素子が作製困難であることが新たな問題として浮上した。しかしながら、OVPE基板加工工程およびMOVPE成長条件の最適化によって本年度中にピットを完全に抑制することに成功した。次年度に計画していたpnダイオード製作に先行して取り組み、発光観察に必要な大面積pnダイオードのプロセスをすでに完了している。その素子の電気特性を評価すると、過去の報告の通り伝導度変調が発現することを確認した。簡易的に発光の観察を行ったところ、電流増大に伴って非常に強い電界発光を生じることがわかり、発光観察系を高発光強度にも対応できるよう新たに設計し製作を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)極低抵抗基板の作製に取り組み、V/III比および成長圧力の変更によって酸素濃度を上昇させ、従来よりも抵抗率を半分程度に低減することに成功した。また、今回の成長条件以外にも酸素濃度を上昇させるパラメータを見出しており、OVPEの極低抵抗化は順調に進捗している。 2)OVPE基板上のMOVPE成長では当初想定していなかった成長界面からのピットという問題が浮上した。しかし、HVPE基板とOVPE基板の差を追求することで、成長温度と基板加工工程の改善で解消できると予測し、短期間で解消することに成功した。また、OVPE基板上のエピ成長が問題なく行えるようになったため、先行して発光観察用のpnダイオードの作製を完了している。 3)先行して作製したpnダイオードの発光強度を観測することで、非常に強い電界発光が発生することがわかり、減光器を有する断面発光観察系を新たに立ち上げる必要があるとわかった。そこで光学系を新たに設計し、その製作をすでに終えている。
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今後の研究の推進方策 |
1)酸素の活性化率が依然として低いため、次年度は点欠陥抑制に取り組みキャリア濃度向上、抵抗率のさらなる低減を狙う。また、OVPE基板の低転位化についても取り組む予定である。 2)作製した極低抵抗OVPE基板上にpnダイオードを作製し、耐圧オン抵抗を評価することで、基板電気抵抗が電気特性に与える影響について調査する。 3)作製したpnダイオードの断面発光像と発光スペクトルを観察し、キャリア濃度分布について考察を進める。
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