研究課題/領域番号 |
21K14218
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
佐々木 悠太 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, NIMSポスドク研究員 (60855782)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テラヘルツ / スピントロニクス / スピン流 / 全光学的手法 / 強磁性金属薄膜 |
研究実績の概要 |
テラヘルツ波は、高分子化合物の分析や爆発物、薬品を分析するための光源としての応用が期待されている。一方で、テラヘルツ波の発生・計測技術に関しては、電子デバイスを用いた手法がまだ十分に確立していないため、超短パルスレーザーを用いた全光学的手法による評価が一般的である。本研究では、全光学的手法を用いることでテラヘルツ帯のスピンダイナミクスの解明を試みた。 スピントロニクス材料として一般的なCoFeという強磁性金属単結晶薄膜をスパッタ法を用いて製膜した。組成比、強磁性金属層膜厚を様々に変化させた試料について発生するスピン流の大きさを評価したところ、スピン流の膜厚依存性が組成比に応じて系統的に変化することが明らかとなった。この結果は、強磁性金属層における電子の平均自由行程が組成比に応じて系統的に変化したためと考えられる。 また、Cu2Sb構造を有するMnCrAlGeという強磁性薄膜において、サブテラヘルツ帯域のスピンダイナミクスが磁性材料の組成・膜厚によって大きく変化することが明らかとなった。特にMnAlGeにおけるMnサイトをCrで部分的に置換することでフェルミ面の状態密度が減少し、その結果としてスピンダイナミクスの緩和時間が増大することが示唆された。Cu2Sb構造を有する厚み数nm程度のMnCrAlGe薄膜において、サブテラヘルツ帯域のスピンダイナミクスが高効率に励起出来ることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般的な強磁性金属材料であるCoFe単結晶薄膜において、スピン流とそのスケーリングについて系統的に調べることで平均自由行程とスピン流の相関について新たな知見を得ることができた。また、数nm程度のMnCrAlGe薄膜においてサブテラヘルツ帯域のスピンダイナミクスが高効率に励起できることを発見した。これらの知見は、今後スピントロ素子を用いたテラヘルツ波発生素子の開発につながるため、当該区分であるとした。
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今後の研究の推進方策 |
全光学的手法を用いることで、テラヘルツ帯域のスピンダイナミクスを励起・評価することができる。テラヘルツ帯域のスピンダイナミクスに関する材料パラメータを明らかにすることに加えて、スピンダイナミクスに伴って発生するスピン流を見積もることで、スピン流の発生効率について調べることができる。また、ハーフメタルホイスラー合金のようなスピン分極率が大きな材料について、数nm程度の高品位な極薄膜の作製を実現することで、高効率なテラヘルツ波発生素子の実現につながると考えられる。
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