研究課題/領域番号 |
21K14219
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
岡本 有貴 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (40880753)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | LiDAR / MEMSスキャナ / 2軸動作 / ToF計測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、移動体上からも安定して計測できるブレ防止機構搭載MEMSスキャナの開発である。本年度は、ブレ防止機構を搭載するための電磁力型2軸MEMSスキャナの試作・評価を行った。電磁力を利用したMEMSスキャナで2軸回転を行うには、回転する2つの軸方向のいずれも磁界を外部から印加する必要があった。そのため、チップの周囲に2対(4個)の磁石を配置するか、MEMSスキャナを1対の磁石に対して45度傾けて配置する必要があり、パッケージング面積を占有してしまっていた。そこで、電磁力によるトルクが得られない回転方向については、ミラーとともに回転する部分(ジンバル部)を非対称構造にすることで力学的に回転トルクの方向を変換し回転させることに成功した。これにより、一方の回転軸方向と平行な1対の磁界のみで2軸回転を行うことが可能となった。つまり、MEMSスキャナダイの側面に平行になるような1対の磁石のみで2軸動作が行え、従来の電磁型MEMSスキャナに比べ周辺部品の削減とパッケージング面積の削減が可能となった。また、電磁力MEMSスキャナではジンバル部に電流を流すための複雑な多層配線加工が必要であったが、回転部分と軸毎の電磁力アクチュエータを分離することで、1層配線のみで動作させることに成功した。 LiDAR用システムにむけた基礎検討としてはナノ秒パルスレーザーと高速フォトディテクターを用いた回路を設計し、パルスの往復時間の計測(Time of Flight)計測が行えることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の予定通りMEMSスキャナの開発を行い、実際に作製したMEMSスキャナの2軸動作を確認することができた。さらに、新たな非対称フレーム構造MEMSスキャナを実現し、従来はできなかった1方向磁界による2軸動作を実現できた。また、パルスレーザーによるToF計測の試験も行うことができ、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2方向に平行動作できるMEMSステージ機構を開発する。具体的には、SOI基板の支持層を用いた静電櫛歯アクチュエータを構成し、X, Y軸いずれの方向に対しても数umの変位が得られようにする。また、活性層部分に本年度作製したMEMSスキャナが内蔵された構造の素子を開発し、実際に2軸回転動作だけでなく、X,Yの2方向の平行移動動作が行える素子を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していた計測装置・SOIウェハの納期が今年度中に納品されないため。
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