本研究の目的は、自動車やロボットのような移動体上から計測しても振動によるブレがなく測距できる移動物体用小型Detection and Ranging(LiDAR)に用いる、ブレ防止機構搭載MEMSスキャナの開発である。 最終年度では、圧電アクチュエータを用いたMEMSスキャナの小型化を実現した。これは、昨年度実現した、本研究で目標としていたブレ防止機構を搭載するための静電引力XY面内駆動アクチュエータへの集積を考えた場合、1年目に作製した電磁駆動型スキャナ構造の場合は大きすぎ、縮小した構造ではスキャナとして利用するに足る性能が出せないことがわかったためである。そこで、2系統の圧電アクチュエータをミラーの周囲に設け、複数構造間の連成振動を利用した共振型圧電MEMSスキャナ構造を実現した。実現した構造はワイヤボンディング用フレームを含めて3.8mm四方の大きさであり、集積に必要な箇所の大きさはXY面内駆動アクチュエータ内に収まるものである。また、共振周波数27kHzにおいて光学振り角40度を達成し、利用に足る性能を実現した。また、本年度はスキャナの駆動電圧と実際の振り角との位相のズレに着目した研究も行い、駆動電圧を補正することで位相を補償し、同期できることがわかった。これにより、今後さらなるレーザースキャンの安定化をできることが期待できる。 以上、研究期間全体を通しMEMSスキャナ構造の実現、XY面内駆動アクチュエータの実現とスキャナ構造の集積、MEMSスキャナの高性能化と小型化を達成し、計画通りに研究を行うことができた。
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