研究課題/領域番号 |
21K14221
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
鎌田 隼 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 研究員 (90850751)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光フェーズドアレイ / プラズモン / 導波路 |
研究実績の概要 |
光フェーズドアレイ(OPA)は、機械的な駆動部がなく高速にビーム整形/走査できる素子であり、LiDARなどの光投影部への応用が期待されている。OPAのビーム偏向角は出射部のアンテナピッチに依存し、クロストークの影響を避けるためには極端に狭いピッチは現実的ではない。そこで、クロストークの影響が小さいプラズモン導波路に着目した。金属の吸収損失の大きいプラズモン導波路は、低損失かつ高屈折率な無機材料とのハイブリッド化が有効である。当該年度は、①高屈折率な無機材料である五酸化ニオブ(Nb2O5)導波路の設計および、②プラズモンカプラの検討を行った。 ①本研究では高屈折率無機材料として、Nb2O5を採用した。スパッタで成膜したNb2O5の波長1550nmにおける屈折率は2.19であり、比較的高い屈折率を持っていることが分かった。Nb2O5と電気光学(EO)ポリマーを組み合わせたモードコンバーターの設計を行った。OPAの位相変調器は、EOポリマー導波路の上下に配置した電極により電界印加するため、伝搬光はTM偏光である。一方で、横型プラズモン導波路の伝搬光はTE偏光が必要である。そこで、Nb2O5を1stコア、EOポリマーを2ndコア、SiO2をクラッドとする偏光回転素子を設計した。数値解析により各導波路サイズを最適化することで、長さ143μmでTM偏光からTE偏光に変換できることを明らかにした。 ②Nb2O5導波路からプラズモン導波路に光入射するためのプラズモンカプラの検討を行い、数値解析によってサイズパラメータの最適化を行った。Nb2O5導波路と金属のギャップや、テーパー長さの違いによるモード変換への影響を検討し、最適な構造パラメータを決定した。その結果、結合損失3.5dBでモード変換できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、電気光学ポリマー導波路/高屈折率材料導波路の偏向制御素子、モードコンバーターの設計を行うことを計画していた。令和4年度は、高屈折率材料導波路を五酸化ニオブとし、偏光回転素子を設計した。また、アンテナ部分のプラズモンカプラの設計検討を行い、当初の計画通りに進捗している。令和4年度中に、デバイスの作製/評価にも着手できているため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに位相変調器、モードコンパーター、アンテナの各素子の設計に着手している。今後は、各素子の集積化に向けたプロセス開発に着手する。また、プラズモンアンテナの作製を行い、光出射の計測を行い、OPA実現の可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は主にデバイス設計に注力していた。令和5年度は、測定系構築を行うため、光学部品等の物品購入を予定している。
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