光フェーズドアレイ(OPA)は光の干渉を利用することで高速なビーム走査が可能であり、LiDARや自由空間光通信、表示デバイス等への応用が期待されている。OPAの偏向角はアンテナ部分の導波路ピッチに依存し、ピッチが狭いほど広偏向角が得られる。しかし、導波路間のクロストークを抑えるようにピッチを設計する必要があり、極端に狭いピッチは現実的ではない。アンテナ部分の長さを500μm、結合長の10%を許容できるとすると、典型的な導波路構造であるポリマー導波路とシリコン導波路を用いた場合の最大偏向角はそれぞれ20度と76度であった。本研究では、広偏向角のために光閉じ込めの強いプラズモン導波路を検討した。プラズモン導波路は、100nm程度の金属ギャップに光を閉じ込めることができるため、導波路間のクロストークの影響が少ない。プラズモン導波路を用いた場合、導波路ピッチ800nmが実現でき、偏向角156度が得られることが示唆された。 本研究では、広偏向角のためにプラズモン導波路を用い、高速・低消費電力駆動のために、電気光学ポリマー変調器を用いる構造を提案した。電気光学ポリマー変調器を評価のために、Mach-Zehnder干渉計を作製し、電圧を印加して変調動作を達成した。この構造はTM偏光が必要である一方で、アンテナ部分の横方向ギャップ型プラズモン導波路はTE偏光が必要である。偏光回転およびモード変換のために、無機材料であるNb2O5を用いた構造を設計した。1stコアがNb2O5、2ndコアが電気光学ポリマー導波路、クラッドがSiO2とするダブルコア導波路構造の偏光回転素子を設計した。数値解析を行い、サイズパラメータを最適化することで、長さ143μmで偏光回転できることを示した。また、Nb2O5導波路とプラズモン導波路の結合器を有限要素法で設計し、結合損失2.78dBの低損失な結合器が得られた。
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