研究課題/領域番号 |
21K14222
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 貴大 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (40810776)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 社会的意思決定 / 基準 |
研究実績の概要 |
本研究は、社会基盤整備においてはステークホルダーの間でしばしば基準レベルでの対立(公平性と効率性、安全性と価格 等)が顕在化することに着目し、基準を巡る意思決定を合理的に支援するための規範的手法の構築を目的としている。 代表者の選出や計画案の選択といった選択肢レベルの対立に比べて、基準レベルでの対立を考える場合には、一部の基準同士は両立可能だが一部は両立不能である等、基準間の論理的関係性が問題となる。したがって、考えている基準の組合せに対し、それらを充足する選択肢の集合が問題となる。 当該年度では、集合に関するランキングから要素に関するランキングを導く社会的ランキング手法に着目し、上記課題への適用を見据えた一般化を行った。具体的には、(論理的に存在するすべての部分集合ではなく)注目している基準・集合に関して、複数のステークホルダーの選好を集約する状況を念頭に置いて、既往モデルの一般化および公理的分析を行った。結果として、既往の研究で知られていた不可能性定理(社会的意思決定理論における古典的成果であるArrowの不可能性定理に相当)が一般化されたモデルでも頑健に成り立つこと等が示された。 本成果は、古典的な社会的意思決定理論の成立範囲に関する新たな知見を与えるとともに、とりわけ本研究課題遂行の観点においては、基準に関する意思決定手法の構築に向けた理論的基盤をなすものと考えられる。次年度以降は、関連する社会的意思決定理論・メタ決定理論の成果の成立・適用可能性を検証することを考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、令和3年度は主に基準に関する基本的な意思決定手法の特徴の分析、令和4年度は古典的理論成果との比較分析を予定していた。研究の過程で、後者に関する成果が先に得られつつあるが、研究課題全体の進捗としてはおおむね予定通りと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
基準に関する基本的な意思決定手法の特徴を分析するとともに、令和3年度に得られた成果を拡張、発展させる形で、関連する社会的意思決定理論・メタ決定理論の成果の適用・援用可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大状況等の影響により予定していた海外出張がオンライン開催となったことから、旅費に次年度使用額が生じた。また研究の進捗過程で当該年度に予定していたソフトウェア等購入の必要に遅れが生じたことから、物品費・その他経費に次年度使用額が生じた。そのため当該金額は、追加的情報収集のための旅費およびソフトウェア等の購入に使用する予定である。
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